あけましておめでとうございます。今年もさまざまな情報を発信していきますので、ぜひよろしくお願いします。
さて、学生野球においては来年2024年に大きな転機があります。日本高校野球連盟がバットの基準を見直すのです。現行よりも細く、厚くして、低反発で打球の速度が抑えられる…より木製バットに近いバットになります。高野連によれば、平均速度は現行モデルより96・3%、初速は96・4%に抑えられるそうです。
昨年、私は元プロ野球選手の清原和博さん(55)と高校野球を観戦する機会がありました。清原さんの次男が慶応高(神奈川)の野球部に所属しており、神奈川県大会、関東大会と、一緒に応援に行ったのです。スタンド席に並んで座り、清原さんの解説を独り占めしながら観戦するという、なんともぜいたくな時間を過ごしました。
清原さんは選手のバッティングを見ながら、ときどき口にしていました。
「今のヒットはバットのおかげだなあ」
「いいバッターだけど、木製バットになったら苦しむかもしれないな」
私も仕事を休んでプライベートで観戦していたのですが、これは本コーナー「輝け!少年野球の星」の読者の皆様に参考になるのではないかと思い、清原さんに解説と掲載許可をお願いしました。
「今の金属バットはすぐれていて、芯を外し、打ち損じてもヒットになる。腕力とバットの性能でホームランが打てるかもしれません。しかし、大学、社会人、プロになって投手のレベルが上がり、木製バットになったらそうはいきません。そのときに困るより、小中学生の頃から基本に忠実な技術を身につけた方がいいでしょうね」
タイミングがずれ、芯を外して当てただけでもヒットになる。もちろん、それも貴重な結果です。しかし、どうしても技術を磨く意識が薄れてしまうというのです。
「結果が出れば、どうしても満足して、バッティングを見直したり、工夫するなど、技術を磨く機会を逃してしまう。どうしたら速い球に負けないのか。厳しいコースを捉えられるのか。日ごろから、そういう意識でバットを振ることが大切だと思います」
高校野球のバット変更は、いい機会になるといいます。
「この変更は非常にいいことだと思います。バットの性能ではなく、技術で飛ばす。選手の安全はもちろん、技術的な成長にもつながる効果が出るでしょう。現在の小中学生は高校に入ったら、新規格のバットでプレーするわけです。指導者も、選手も今からそれを意識して練習してほしいですね」
「バッターなら、まず速い球にどう対応するかでしょう。ピッチャーに遅れずタイミングを取ること、そして速い球に負けないスイングを身につけること。変化球への対応は、それができてからでも遅くないと思います」
清原さんは高校時代に甲子園で史上最多の13本塁打を放っています。1983年(昭58)PL学園の1年生で4番を打ち、日本一に輝きました。横浜商との決勝戦で初本塁打を放つと、2年春に3本、夏に3本、3年春に1本、そして最後の夏に5本で計13本。通算2位は桑田真澄(PL学園)元木大介(上宮)中村奨成(広陵)の6本ですから、清原さんの記録が抜きんでていることが分かります。
また、高校からプロに入ると、1年目から打率3割4厘、高卒ルーキーとしては最多記録となる31本塁打を放ちました。中学から高校に入っても、プロに入って木製バットに変わっても、すぐに対応できたことになります。
その秘訣(ひけつ)は小学生から続ける練習の意識にあったそうです。
「一貫して『バッティングの基本はセンター返しだ』という指導を受けましたね。レフトにホームランを打って、ひどく叱られたこともあるぐらいです。『こう打て』『ああ打て』などと細かくは言われません。いつも自分で、センターに打球を飛ばすにはどうしたらいいか考えて練習していました」
右打者ながら、右方向へもホームランが出ることが清原さんの特徴でした。しかし、右方向を狙うわけではないといいます。
「センター返しにタイミングを合わせ、少し早ければレフト方向へ、少し遅れればライト方向へ飛んでいく。その基本は小中学生の頃から、プロで引退するまで変わりませんでした」
小中学生の野球選手たちへのメッセージも寄せてくれました。
「小学生、中学生の年代で大切なのは、打者なら遠くへ打球を飛ばす、投手なら速い球を投げる、そして速く走る。そういった目標を持って練習することだと思います。結果を追い求めて小細工をするのではなく、スケールの大きな選手を目指してほしいですね」
目の前の試合でヒットを打ちたいのは当然のことです。しかし、「急がば回れ」と言います。
「遠くへ飛ばす」
「速いボールを投げる」
そのためにどうするかを考え、練習することが、結局は成長の近道なのかもしれません。
本コーナーを読んでくれている小中学生が、数年後の甲子園で、清原さんの記録に挑む日を楽しみにしています。【飯島智則】

