交流戦の直前で阿部監督が辞任し、今季の巨人はどうなってしまうのだろうと心配していた。チームも5連敗中で、橋上監督代行も必死に打開策を考えていたのだろう。その答えが、思い切ったベテランの起用だった。
3番に坂本、7番に丸、8番に松本をスタメン起用した。このオーダーが当たったのが、1点をリードされた3回裏の攻撃だった。無死一、二塁から坂本がセンター前へのポテンヒットでつないだ。大城の押し出し四球を呼び込み、キャベッジが勝ち越しタイムリー。そして丸がライト前へタイムリーを放って突き放した。続く松本がセーフティーバントでチャンスメイクし、戸郷のタイムリーで一挙5点を奪った。
ベテランの執念を感じた。坂本のヒットはラッキーなヒットに見えるが、打ったのはソフトバンク・アルメンタの内角高めの真っすぐだった。球速は153キロで、カウントも1-2と追い込まれていた。丸も2ストライクに追い込まれてから、フルカウントまで粘ってからのヒット。松本のセーフティーバントも、三塁線に切れそうな打球だったが、ライン上で止まってヒットになった。
チームの危機でもあるが、スタメンから外れる試合が多くなったベテラン選手にとっては、自らの野球人生をかけた勝負になる。実績のあるベテラン選手の危機感は、チームへの刺激になる。こういう表現が正しいかどうかは分からないが「毒をもって毒を制する」で、チームに漂う重苦しい空気を吹き払う起用法になったと思う。
FAで移籍してきた松本は少し違うと思うが、坂本と丸は後がない立場だろう。阿部監督は坂本がサヨナラホームランを打ったあとの試合でも次の試合はスタメンから外していた。2000本安打まで66安打まで迫っている丸も、続けてスタメン起用された試合はない。本人がどう思っているか聞いたことはないが、ここで結果を出していけば大記録達成への夢も膨らんでくる。
言葉は悪いが、指揮官の交代はそれまで起用されていなかった選手にとってはチャンスになる。これも厳しいプロの世界の戦いでもある。ベテランの執念がチームの起爆剤になるかもしれない。(日刊スポーツ評論家)




