政界地獄耳

日本と欧米各国との比較は適切なのか/政界地獄耳

★あれだけ成立時にもめて、立憲民主党では離党者まで出したのに国民世論の方から「緊急事態宣言を早く出せ」という声が出てくる日が来るとは思わなかった。日本医師会もテレビのワイドショーも緊急事態宣言を心待ちにしている事態だ。新型コロナウイルスの感染状況はいまだに欧米に比べて少ない。当初は検査をしないから感染者も少ないといわれたが、東京は市中感染のデータを公表しないまま、夜間接客を伴う飲食店でのクラスター(感染者集団)形成が報告されているとして、キャバクラやバー、ナイトクラブなどへの入店を自粛するよう呼びかけた。

★だが、数字上は院内感染が発生した可能性の高い台東区の永寿(えいじゅ)総合病院の感染者数が全体を引っ張る勢いだ。緊急事態宣言を急げという声の根拠は海外の感染者数の増え方にある。31日現在で米国16万1807人、イタリア10万1739人、スペイン8万7956人、中国8万2198人。欧米の例を見れば早く手を打たなくては大変なことになるというわけだ。ところが日本は2093人(クルーズ船を除く)と圧倒的に少ない。

★無論日本が徹底した手洗いの敢行やマスクの着用、医療機関での感染源の特定などが進んでいるから抑えられているという面もあるだろう。3月30日には日本ではだれもが接種したBCGワクチン接種に新型コロナウイルスの感染や重症化の予防効果があるという説が流れた。BCGの接種が行われている国では、コロナウイルスの広がり方が遅いという「相関性」があるというオーストラリアからのニュースだ。BCGは結核を予防するワクチンで、ワクチン開発に関わったフランスのパスツール研究所の研究者の名前からなる。現在は生後1歳までに接種される。21日にはドイツ、23日にはオランダでも運用を始めたようだが、1951年から接種が義務化されている日本で効果を発揮しているとの分析だ。つまり接種をしてこなかった欧米各国との比較が適切かということになる。情報の分析が先か緊急事態宣言が先か。(K)※敬称略

政治の世界では日々どんなことが起きているのでしょう。表面だけではわからない政界の裏の裏まで情報を集めて、問題点に切り込む文字通り「地獄耳」のコラム。けして一般紙では読むことができません。きょうも話題騒然です。(文中は敬称略)

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