安倍晋三首相は28日、新型コロナウイルス感染拡大阻止に向けて27日に発表した休校要請方針について、最終的判断を各地方自治体にゆだねる考えを示した。一斉休校は自らの政治決断としながら、実際は「丸投げ」。文科省は最後まで反対したが、首相が押し切ったことも分かった。結論ありきの対応を押しつけられた国民は怒っている。麻生太郎財務相は、政府の費用負担を問うた記者を「つまんないこと」と一蹴した。感染被害はこの日も全国で拡大。安倍政権に国民を守る覚悟はあるのだろうか。

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首相はこの日、衆院財務金融委員会で、全国への休校要請について「基本的な考え方として示した。各学校、地域で柔軟にご判断いただきたい」と述べ、最終的な判断は各自治体に「丸投げ」する構えを示した。学校保健安全法は、感染症予防を目的とした休校の権限があるのは学校の設置者と規定するが、子どもを持つ多くの保護者や教育現場、企業側に大きな決断を強いながら、無責任な呼びかけだった。

唐突な休校要請は、3月2日から春休みに入るまでとされる以外、具体的対応は示されていない。事実上の「見切り発車」だ。

それもそのはず、関係者によると、文科省や萩生田光一文科相は、最後まで全国一斉休校に反対したが、27日になって首相が言う「政治決断」に押し切られたという。首相は専門家会議の提言を根拠にしたが、会議で一斉休校の議論は出なかったとの指摘もある。

休校中の子どもの行動範囲はどこまで認めるのか、保護者の負担を政府はどこまで担保できるのか…。文科省の幹部は具体的に説明できなかった。萩生田氏も、時期や期間は柔軟に判断するよう理解を求め、首相に歩調を合わせた。

首相が「政治決断」を急いだ背景には、コロナウイルス感染拡大をめぐる指導力不足や「後手後手」批判を、挽回したかったとの見方が強い。対応の遅れで支持率が急落し、東京五輪・パラリンピックの開催にも暗雲が漂い始めた。ただ、これでは国民の都合より政権の都合も同然だ。

この日、衆院を通過した20年度予算案には、野党が求めた新型コロナウイルス関連の予算は盛り込まれなかった。政府は予備費で対応する方針だが、約3000億円の緊急予算措置を議会に求めた米トランプ政権などの他国とは対照的だ。

ウイルス対策をめぐっては、首相が基本方針でイベント自粛を呼びかけた26日に、首相補佐官の秋葉賢也衆院議員が地元の仙台市で出版パーティーを開催。専門家会議が「集団感染が起きやすい」と指摘した立食形式で行い、開催を問題視した報道陣に反論するなど無責任な対応を取ったが、首相は「慎重に判断すべきだった」とした上で、野党の更迭要求を拒んだ。

首相自身も対策本部を開かずに夜の会食に出席した日があると、野党は国会で批判。21日には、自身に近い自民党の稲田朋美幹事長代行のお誕生祝いに出席したが、首相は「いわゆる宴会ではない」「いけないことなのか」と反論した。

日本が直面する危機から守るべき相手は誰なのか。首相や「お友達」の感覚はすべてが、ズレている。