強い揺れに襲われた時、頼りにするのが、気象庁がただちに発信する、さまざまな情報だ。テレビやスマホなどの地震速報や記者会見を真っ先に確認するのが習慣になっているが、その舞台裏はどうなっているのか。「3・11」が近づき、大地震への不安が改めてよぎる中、国民の命と財産を守るため、24時間体制で地震列島の監視と対応を続けている気象庁の最前線を紹介する。

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東京の本庁で、自然災害のうち、地震、津波、火山を担当するのが地震火山部(計232人)だ。管理課(21人)、地震津波監視課(69人)、火山監視課(74人)、地震火山技術・調査課(68人)で構成し、地震と火山の両監視課にある監視・警報センターが主に、監視などを担当。東京と大阪管区気象台には、地震火山オペレーションルームが設置されており、24時間体制で運営している。地震津波監視課の担当者によると、いずれかで大規模災害などが発生して障害などが起きても、もう一方が確実に機能するよう2拠点にしている。

同ルームは、東京の地震部門の場合、日勤は午前9時~午後5時15分=11人、夜勤は午後4時半~翌午前10時=7人の体制を、計41人で運用している(火山は計30人、日勤、夜勤とも6人ずつ)。大阪の地震部門は日勤7人、夜勤4人。各管区気象台にも地震火山課がある(大阪40人、札幌・仙台・福岡が各16人、沖縄気象台9人)。各地方気象台にも地震の担当者がいる。

同ルームでは、気象庁や関係機関が全国に設置した観測点のデータをリアルタイムで一元的に収集し監視。観測点は震度計が約4400、地震が計約1800、津波が計約410に上り、世界中のデータも入ってくる。発生の場合、地震の規模や震源の決定、津波の予測などの解析をただちに行い、情報を発信する。地震は震度1以上は発表。5強以上は緊急記者会見も行い、5弱でも直近で頻発している場所の場合など状況に応じて開く。例えば緊急地震速報は発生から数秒~十数秒、津波警報・注意報は約3分以内に発表、緊急会見の場合は1~2時間後までに開く方針で、可能な限り迅速に国民に正確な情報を発信することに全力を挙げている。

同ルームのほか、地震火山部や広報室などで会見など緊急対応に関わる職員全員は、いつでも即応できるよう、携帯の充電状態、深酒をしない、遠出を控える、体調管理などに気をつけながら日常生活を送っているという。会見が必要な規模の地震などが発生した場合、関係職員にはメールが届き、約30分以内には本庁に駆けつけ、会見などの準備を急ぐ。都内には各官庁の防災担当者らの危機管理宿舎が数カ所あり、必要な担当者が任期中は住んでいる。例えば広報室では8人のうち2人が宿舎に入っている。

現在の緊急会見に登場する地震津波監視課・束田進也課長も、宿舎にいる。日常生活に気をつけるのはもちろん、「会見の背景となる地震活動は何も起きていない平常時から見るよう心がけています」とし、会見については「短い時間ですべてを伝えることは困難ですから、冒頭、端的に注意事項を伝えることを心がけています」という。東北だけでなく、北海道、首都、南海トラフなどでの心配も高まっているが、地震津波監視課の担当者は「日本はどこで地震が起きてもおかしくない。ここは安心といえる場所は、残念ながら日本ではないです。日ごろから備えていただきたいです」と強調している。【久保勇人】

○…東日本大震災の発生から11年にあたり、地震津波監視課の地震津波防災推進室は、オンライン連続講演会を開催。地震・津波に関する基礎知識や20年から導入された津波フラッグをテーマとした講演動画をユーチューブで配信している(閲覧無料、登録不要)。既に2本が公開中で、3月中にもう1本配信予定。これまでも各地でシンポジウムや講演会などを開催しているが、コロナ禍を考慮して今回は動画配信とした。