3月から調教師に転身する福永祐一騎手(46)は国内での騎乗を終え、今週のサウジ遠征で最後の騎乗を迎える。連載「ジョッキー福永祐一と私」ではゆかりの深い関係者が思い出を振り返る。

 ◇  ◇  ◇

競馬学校時代から約30年、ともに騎手という立場で切磋琢磨(せっさたくま)してきた。古川吉洋騎手(45)は同期として、常に近くで福永騎手を見てきた。これまでの日々を笑顔で、懐かしそうに振り返る。

古川吉騎手 デビューからあんまり変わらない。人当たりがいいところとかね。長い間ずっと一緒にいて、1回も仲が悪くなったりとかはないし、いい距離感なんだと思う。俺が結婚式を函館でやった時、同期のみんなは競馬で忙しいと思って呼ばなかったら、怒られたよ。それくらい仲はいい。それよりも祐一は本当にすごい男になったと思うよ。俺が祐一に勝ってるのって、G1を先に勝ったことくらいじゃない? それ以外ははるか上にいる感じだよね(笑い)。

デビュー2年目の97年暮れに阪神3歳牝馬S(現阪神JF)をアインブライドで勝ち、同期で一番乗りとなるG1初制覇を飾った。そのときも、先を越されて悔しかったであろう福永騎手は「お祝いしてくれた」という。近くにいて感じる福永騎手の温かさ。その人柄を知っているからこそ、調教師での成功を疑わない。

古川吉 まさか祐一より長くジョッキーをやるとは思わなかったなあ(笑い)。けど、調教師になるって聞いた時も驚かなかったし、すごく勉強していたのは知っている。福永祐一は、福永祐一でいれば大丈夫でしょ。祐一も「やり残したことはない」って言ってたからね。本当に幸せなことだよ。

そんな信頼を置く福永騎手へ。最後に同期らしいひと言があった。

古川吉 新しい世界に飛び込むわけだし、不安はあると思う。俺は心配していないんだけど、困ったことがあれば喜んで手伝うよ。福永厩舎、どうなるか楽しみにしている。

“花の12期生”のいい距離感は今後も続いていくのだろう。【取材・構成=藤本真育】

◆競馬学校「花の12期生」 96年卒の10人。栗東所属は福永祐一をはじめ高橋亮、常石勝義、古川吉洋、細江純子、和田竜二の6人。美浦所属は柴田大知、柴田未崎、田村真来、牧原由貴子の4人(所属等はデビュー当時)