
- Trattoria del Nuovo Macello。住所:Via Cesare Lombroso, 20, 20137 Milano サイト:http://www.trattoriadelnuovomacello.it/home/
町のレストランは外国人料理人が多い
僕にとってのイタリアの母であるヴァレーリアは御年92歳になっても同じことを2度と言わない医者も驚く頭脳を有している。僕の最初の語学学校の先生の伯母であることから、かれこれ20年の付き合いになるけど、72歳から92歳まで唯一繰り返し聞かれるのが「水を買うならガス入り。ガスなしの水なら蛇口をひねって飲めばいい」って言葉と、「レストランに行くならイタリア人が料理したイタリアンしか食べたくない」ってこと。
それほど今のミラノにおいては、手軽にイタリア人が料理するイタリア料理はおめにかかりにくくなっている。町中のレストランは人件費の関係もあって外国人の料理人が多いし、ピッツェリアに至っては、ほとんどがエジプト人やトルコ人だ。もはやピザ屋は外国人が手軽に始められる業態でしかないといってもいい。もちろん、お金を出せば星付きレストランは数多くあるけれど…。

- もっとも価値が高いのがお昼の定食メニューで18ユーロ。夜はポーションが大きくなるだけ。これはアンティパストで出たニシンと野菜にバジリコソースをあえたもの
希少な存在ヌオーヴォ・マチェッロ
ミラノ市中心部の外環道路を50メートルほど外側に出たところにあるレストラン「ヌオーヴォ・マチェッロ」は、イタリア人シェフが料理し、しかもお手軽価格で本場のイタリアンが楽しめる希少な存在だ。
やがて60年を迎える、もはや老舗レストランと呼べるこの店は、他のイタリアンがそうであるように、現オーナーの祖父母の手料理から始まったという。伝統的なミラノの料理を追及している。
以前、スローフードの見本市で中部イタリア、サンベネデットでヤギのチーズを作っている30歳くらいの兄妹を取材した際、こんなことを言っていた。
「父の時代、生産の合理化からチーズを寝かせる板を掃除が簡単なプラスチックにした。衛生的なメリットもある半面、チーズのクォリティーは落ちた。今は祖父が使っていたモミの木の板を使っている。取扱いの手間はかかるが、じっくりチーズを熟成させるには天然木がいい」

- メインのひとつ、青い魚のグリルとアスパラガス。真ん中はナスをペーストにしたもの
本来のスタイルは5センチの厚いカツ
ヌオーヴォ・マチェッロも祖父母のミラネーゼ(ミラノ風の意)にこだわり、そのひとつが厚切りのミラノ風カツレツだ。
最初、これを食べた時には驚いた。他のミラノ料理のレストランでは、通常コトレッタ・アッラ・ミラネーゼは長さ20センチもあろうかという、薄く切られた大きなカツが出る。
ところが、彼らのコトレッタは5センチはあろうかという厚手のカツなのだ。
「コトレッタ・アッラ・ミラネーゼの本来のスタイルはこうなんですよ」
フロアを仕切る女性が教えてくれた。
「ヌオーヴォ・マチェッロ」の料理の特徴は、そういったトラディショナルな味を尊重しながらも、スタイルはヌォーヴァ・クッチーナ・イタリアーナ(イタリア的ヌーヴェル・クイジーヌ)で新しい挑戦に富んでいるところだ。
客層もユニークでモダンなスタイルにも関わらず年配者が多く、外国人客も目立つ。初デートかなと思しきエリート風カップルもいるし、ジーンズ姿のおじさんばかりのグループもある。共通しているのは、どこでもいいわけでなく、この店を目指して食べに来たのだろうという目的意識か。それは、客とウェイトレスとの会話でわかる。

- 名物のひとつ、ポルペット(肉団子)。外側はカリッと、真ん中はジューシー。中央はラディッキオ・ロッソ(赤チコリ)
友人を絶対に落胆させないお店
イタリア人料理人の手による、文字通り本場の味。それでいて、コストパフォーマンスが高い。僕にとっては「日本から来た友人を絶対に落胆させないレストラン」、そんな位置づけが「ヌオーヴォ・マチェッロ」なのである。(イタリア・ミラノ在住・新津隆夫。写真も)

