いよいよ日本時間26日(現地時間25日)は、米映画界最高の栄誉とされる第93回アカデミー賞が開催されます。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、今年は2か月ほど延期されての開催となりますが、リモートなしの対面で授賞式が行われることも話題です。アカデミー賞は例年、ハリウッドにあるドルビー・シアターで授賞式が行われていますが、コロナ禍の今年はロサンゼルス(LA)のダウンタウンにあるユニオン駅がメイン会場となります。2002年から19年間に渡って授賞式を行ってきたドルビー・シアターは、今年はサブの会場となり、他にもコロナ禍で渡米することができない欧州在住の候補者のためにロンドンやパリにも中継拠点を設けることが発表されています。
昨年はコロナ禍によるロックダウンで長期間に渡って映画館が閉鎖され、多くの新作映画が公開延期となり、ストリーミング配信に切り替わる作品も増えるなどハリウッドにとっても激動の1年でした。そんな中で行われる今年の授賞式は、「まるで映画のような授賞式」になると同授賞式のプロデューサーは会見で語っていますが、人々が再び映画館に足を運んで映画を観たいという気持ちになるようなハリウッドの原点を目指す授賞式になるそうです。そんなコロナ禍の授賞式会場として白羽の矢が立ったのが、ユニオン駅でした。
名前からも分かるように、地下鉄や全米横断鉄道アムトラック、近距離のコミューター鉄道メトロリンクなどが乗り入れている駅で、空港行きのバス乗り場などもあります。なぜ駅で授賞式?と疑問に思われる方も多いと思いますが、実はユニオン駅は歴史的史跡にも指定されているLAを代表する名所でもあります。1939年に建てられたスパニッシュ・コロニアルとアール・デコを混合した白亜の駅舎は、歴史を感じさせるクラシックな佇まいが映画関係者を魅了しており、150本を超える映画に登場する人気のロケ地として親しまれています。古くは「武装市街」(1950年)や「追憶」(73年)、「ブレードランナー」(82年)などの撮影が行われているほか、「レインマン」(88年)では列車に乗り込むダスティン・ホフマン演じる兄レイモンドをトム・クルーズ演じる弟チャーリーが見送るシーンで使われています。また、近年ではクリストファー・ノーラン監督の「ダーク・ナイト・ライジング」(12年)やレオナルド・ディカプリオ主演の「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」(02年)、真珠湾攻撃を題材にした「パール・ハーバー」(01年)などにも登場しており、映画の祭典の会場にふさわしい場所なのです。
ユニオン駅は建物内部の美しさも特徴の一つで、駅構内は重厚でレトロな雰囲気が漂っており、一歩足を踏み入れると80年前にタイムスリップしたかのような感覚になります。正面入り口を入ってすぐ左側にはかつてチケット売り場だった空間があり、ここは一般客の立ち入りは制限されていて主に映画のロケやイベント専用スペースになっています。大きなアーチや梁が組まれた高い天井、丸いアール・デコ調のシャンデリア、模様が美しい大理石の床と、どこを切りとっても絵になる美しさで、駅のシーンのみならず「ブレードランナー」では警察署のシーンに使われたように様々な設定に利用されています。
今回の授賞式では、そんなオープン当初からほとんど姿を変えていないクラシックな作りのチケットカウンターに加えてメインロビーと待合室が主な会場になり、さらに3つの中庭も組み合わせて、感染予防のためのソーシャルディスタンスを保った上でスターたちが一堂に会することになります。しかし、ここは駅なので、授賞式の準備期間中もそして当日も列車やバスは通常通り運行されているため、一般の利用客も駅を利用することになります。正面入り口は封鎖されロビーには立ち入りができないようになっていますが、建物
奥にある駅構内には入ることができ、利用客はう回路を使って乗り場まで移動することになります。授賞式会場となるスペースはすべて柵と目隠し用のシートで覆われて中の様子は見えないようになっており、建物の外には受付やコロナ対策の検査場などのテントが設置されているのが遠目から見えます。レッドカーペットは入口付近に用意されているようですが、こちらも一般の人からは見えないようになっています。
コロナ対策で、今年の授賞式は大幅に規模が縮小され、招待されているのは各賞の候補者とそのパートナー、そしてプレゼンテーターのみとなっていますが、いまだかつて体験したことのない授賞式となることだけは間違いないでしょう。コロナ禍で迎える初めてのアカデミー賞は、ハリウッドからユニオン駅に場所を移してどのようなハリウッド・マジックを見せてくれるのか乞うご期待です。
(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)









