トップアスリートやシンガー・ソングライターらが相次いで闘病を公表した「白血病」-。血液のがんであるこの病気の発生率は、年々上昇しているといいます。その病因は不明のケースが多く、検査、治療も長期間に及びます。米国の血液内科マニュアルを独学で修得した、自称「さすらいの血液内科医」、東京品川病院血液内科副部長・若杉恵介氏(48)が「白血病を知ろう!」と題して、この病気をわかりやすく解説します。

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現時点で最新とされているWHO(世界保健機関)の分類でも、白血病には約40種類程度のカテゴリーがあります。名前を書くだけでも、いっぱいになってしまいます。というわけで大きく分けて「急性」と「慢性」、そして「骨髄性」と「リンパ性」の4つに分けることができます。

前回も触れましたが、頻度的には急性と慢性は3対1。さらに骨髄性とリンパ性も日本では4対1となります。若い世代はリンパ性の方が多い傾向ですが、白血病全体としてはやはり高齢の方の頻度が高くなっています。

そのため、白血病というと、確率論からしても「急性骨髄性白血病」と考えられます。多くの場合、入院しての治療が必要となります。近隣の病院からも電話で「大至急、診て下さい」と連絡が来ます。「急性リンパ性白血病」も、ほぼ同じ流れです。

「慢性骨髄性白血病」になると、「健康診断で見つかった」とか、「痛風発作で採血して見つかった」など、ややゆったりした話が多くなります。そのため、以前は入院して骨髄検査を行っていましたが、最近は採血で遺伝子の検査を行い、外来で説明して治療に入る場合が多くなっています。しかし、進行すると「急性」と同じ対応が必要になることがあります。

「慢性リンパ性白血病」は、ここ数年新薬の登場により話題としては盛り上がっているものの、日本における頻度は少なめです。発見するときも「ここ数年、健康診断で白血球が多いと言われているのですが、リンパ球が多いだけで問題ない」とされたりします。

いずれにせよ、血液内科を含め、医者が慌てて対応するのが「急性」です。採血で疑い、可及的速やかに「骨髄検査」を行い、「リンパ性」か「骨髄性」か、さらに細かく「前骨髄球性」かどうか、を診断していきます。なぜなら、それぞれ初期治療が異なるからです。そして貧血や血小板減少に対応するため血液型の検査も並列で行われています。患者さんが待合室やベッドで待つ間、検体検査室の中はひっくり返るほどの忙しさで、診断に結びつくよう努力しています。

◆若杉恵介(わかすぎ・けいすけ)1971年(昭46)東京都生まれ。96年、東京医科大学医学部卒。病理診断学を研さん後、臨床医として同愛記念病院勤務。米国の血液内科マニュアルに準拠して白血病治療をほぼ独学で学ぶ。多摩北部医療センターなどを経て、18年から現職の東京品川病院血液内科副部長。自称「さすらいの血液内科医」。趣味は喫茶店巡りと読書。特技はデジタル機器収集。