「夏バテ」は、夏の暑さによる自律神経系の乱れに起因して表れる、さまざまな症状をいいます。暑気あたり、暑さ負け、夏負けと呼ばれることもあります。冷房のなかった時代は、猛暑による食欲不振、体力低下、慢性的な疲労感などいわゆる「夏やせ」と呼ばれる症状が主でしたが、空調設備が普及した現代では、気温と湿度の急激な変化により自律神経のバランスが崩れて起こることが多く、ストレスや冷房による冷え、睡眠不足なども原因となります。

夏バテという名称から夏のみの病気と思われがちですが、最近はこの夏バテの症状が、秋になり涼しくなっても回復しなかったり、涼しくなってから症状が出始めたりするケースがあり、このため「秋バテ」と呼ばれています。

自律神経の働きで、暖かくなると血管は広がり、涼しくなると血管は縮みます。それが、急に寒くなったり、あるいは1日のうちで温度差が高いときと低いときがあったりすると、この自律神経の働きが崩れ、体のなかの臓器や神経の働きが、その変化にうまく対応できなくなり、体のだるさ、胃腸のトラブル、頭や腰の痛みなど、いろいろな「プチ不調」が生じるのです。自律神経のバランスが崩れて起こることから、秋バテは、器質的疾患がないことを検査で調べて異常がない場合、「自律神経失調症」が、正式な病名となります。

対策としては、まず、夏に乱れた生活習慣を回復させなければなりません。起床、就寝時間を決め、規則正しい生活を送り、十分な休養と栄養補給を行い、体を休めることも大切です。食事は豚肉や大豆、魚、野菜などいろいろな食品をバランスよくとり、冷えを増長する冷たいものは控えて、温かいお茶、スープなどを飲むようにすると効果的です。特に水分補給が重要になってきます。

9、10月でも暑くなる日があり、クーラーを使用する場合、体に負担がかからないように室温と外気の差を5度以内にすることです。カーディガンや膝掛けなどを上手に利用して体温調節を行うことなど、温度の急な変化で体調を崩さないこと、などが対策として挙げられます。

◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビ、ラジオでコメンテーターとして出演多数。テレビ朝日系の人気ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」の医療監修をドラマ立ち上げの時から務める。気分転換は週2回のヨガで、15年あまり継続。インスタグラムdoctormorita、ホームページmorita.proなどで情報発信中。