前回説明した「大動脈弁狭窄(きょうさく)症」で手術になると、現在保険適用で行われているのは、<1>「人工弁置換術(機械弁)」<2>「人工弁置換術(生体弁)」<3>「患者自身の自己心膜を使った大動脈弁形成術」<4>「TAVI(経カテーテル的大動脈生体弁植え込み術)」の4つです。
大動脈弁の多くの原因は、石灰化によって葉っぱのように柔らかかった弁が、小さく硬くなってしまうからです。かつては<1>と<2>の弁を取り換えてしまう「弁置換術」しかありませんでした。70歳以上であれば、薬が半年でやめられる生体弁、それ以下の年齢の方であれば機械弁が適応。しかし、機械弁であれば血栓を防ぐ抗凝固薬を一生服用しなければなりません。
そこで登場したのが<3>の患者自身の自己心膜を使った大動脈弁形成術です。この手術は07年に第1例目が行われ、すでに1300件を超えています。東邦大学医療センター大橋病院の心臓血管外科の尾崎重之教授が開発したことから“尾崎式”とも呼ばれています。この尾崎式は、人工弁のように異物を入れるのではなく、患者自身の心臓を包んでいる心膜の一部を使うのです。そのため、術後に抗凝固薬を服用する必要はなく、患者さんにとって良い方法だと思います。それで、私たちも12年からこの手術を始め、すでに120例以上行いました。そして、尾崎式は15年がたち、良い手術であると評価されたのです。
ただ、この手術は自己心膜で大動脈弁を作って縫い付けるので、極めて細かく縫う手術になります。だから、この手術は、術者の技量が大きく左右すると言って良いでしょう。そして、<4>の「TAVI」については次回に-。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)

