歯を失うことにより、かむ力は当然衰えます。隣り合わせにいた歯が空いたスペースを埋めるように傾く、あるいは、かみ合わせの相方になる歯が支えを失い下がってしまうなどの不具合も生じるため、あまり時間を置かずに何らかの方法で補うことが望ましいといえます。

取り外し式の入れ歯や、両隣の歯を削って入れるブリッジに比べて、なくなった部分をシンプルに補える「インプラント(人工歯根を埋め込む)治療」を選択される患者さんも増えてきています。歯科医学の分野には専門分科会といういわゆる学会組織が存在しますが、現在もっとも会員数が多いのが「日本口腔(こうくう)インプラント学会」です。1万6000人を超える歯科医療従事者が学術的な裏付けを追求し、最先端の知識を共有しなければならないと考える背景には、それだけニーズが増えているという実情があります。

少数の歯を失った顎に埋め込むだけでなく、入れ歯がしっかり固定されるように使う方法など、インプラントを応用することで生活の質が向上する可能性は無限大です。しかしながら患者さん側に知っておいていただきたい点があります。「人工歯根は強そうだから特別な手入れをしなくても大丈夫」といった認識は誤りです。

インプラント周囲に汚れがたまると炎症が起き、埋め込んだ顎の骨が急速に溶けていきます。天然の歯よりもむしろ外敵に弱いと考えてください。歯を失う原因の第1位は「歯周病」ですので、当然インプラント治療を望まれる方の多くは歯周病の既往を抱えています。残っている歯のリスクも含めてきちんと診断し説明をしてくれる医療機関を選ぶことに加え、術後のメンテナンスがしっかり受けられる環境がマストになります。