がん死亡者数の第1位は「肺がん」、2位は「大腸がん」、3位「胃がん」とあって、これらの疾患や臓器に対する注目度は高い。ところが5位の「肝臓がん」への注目度はそれほど高くありません。しかし、今、肝臓がんに結び付く肝臓病患者さんが増加傾向にあり、もっと注目すべきだと思います。
実際、患者さんに「肝臓はどこにありますか?」と聞きますと、「わからない」と答える方が結構多いのです。肝臓は私たちのおなかの中にあり、体内で最も大きな臓器です。おなかの中の右上に位置しており、右葉と左葉に分かれています。重量は体重の1・5%程度もあり、かなり重い臓器です。
肝臓は重いだけではなくとても重要な臓器とあって、「肝心要(かんじんかなめ)」の言葉にも使われているくらいです。その働きは、「体内の化学工場」と言われ、多様な働きを見せてくれます。中核になる働きは「代謝」。これは、栄養素を人体に必要な物質やエネルギーに変えることで利用しやすくするのです。
加えて、「解毒・排出」「胆汁の分泌」。解毒・排出は、アルコールや薬物などを解毒し、体外に排出する働きです。胆汁の分泌は、古くなった赤血球やコレステロールから合成してつくられたものが胆汁で、脂肪の吸収にも重要な働きをするものです。この3つの働きのほかにも「血液凝固物質を作り出す」「免疫の働き」「ホルモンの代謝」など、とにかく多様な働きをしている臓器、それが肝臓です。
重要な肝臓だけに、その肝臓病患者さんが増えるのは大きな“生命問題”です。肝臓病の予防に努めてもらうために、今日から「正しく知ろう肝臓病」をお届けします。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)
◆青木武士(あおき たけし) 昭和大学医学部外科学講座消化器・一般外科部門 主任教授。1993年(平5)、昭和大学医学部卒業。医学博士。日本外科学会代議員、日本消化器外科学会評議員、日本肝胆膵外科学会高度技能指導医。Best Doctors in Japanに2014~22年選出。蛍光ガイドによる解剖学的肝切除を世界で初めて報告。日本内視鏡外科学会カールストルツ賞受賞など受賞歴多数。患者さんに寄り添う外科治療をモットーとする。

