諏訪中央病院のホスピスに80歳のおじいちゃんが入院してきました。胃がんが腹腔(ふくくう)内転移していた。

話し好きの方でした。ぼくが「お仕事は何をしていたの」と聞くと「農業」という答え。農業が大好きで、村の誰よりも立派な野菜をつくろうと、新しい機械や、新しい肥料、新種にこだわってきたそうです。

【農業の仕方を変えた】

でも、働いても、働いても楽にならないことに気がついたと言います。

「畑にしがみついているだけで、苦労が絶えない。なんの喜びがあるのだろう」と疑問を感じたそうです。

新しい農機具や肥料を大量に買うことをやめました。少しくらい雑草があってもいい。少しくらい収穫量が減ってもいい。そう思うようになって、プレッシャーがぐっとなくなったそうです。見事なギアチェンジでした。

【世界旅行をはじめる】

そして浮いたお金で、海外旅行に行くようになりました。世界は広いなと実感しました。

カタコトの英語で世界を旅して、会話はチンプンカンプンでも、身ぶり手ぶりでなんとかなることも知りました。

病室の彼の枕元には、CDプレーヤーが置かれ、彼が旅したアフリカやインド、南米の音楽が流れていました。家族や友人が、おじいちゃんの世界旅行の話を聞きにいつもやってきます。彼の病室は笑いが絶えませんでした。(続く)