私たちは、「人工内耳」を入れた患者さんからたくさんの喜びの声を頂いています。その中から、まずは6歳の女の子を紹介します。
A子さんは難聴で、幼稚園の時に人工内耳の手術をしました。それからしばらくして、私に手紙を書いてくれました。「聞こえたよ。雨の音が聞こえたよ」と、書いてありました。難聴の方は、何げない音は聞こえていません。それが聞こえるようになったことの喜びです。お子さんは、そういう喜び、驚きを感じることができるのです。
これは、中途難聴の「加齢性難聴」の方からも話してもらえます。「今まですっかり忘れていたけれど、秋になると鈴虫の音やコオロギの音が聞こえます。そうだったんですねー」と。言葉の聞き取りはもちろん喜んでもらえますが、日常生活を豊かにしてくれる鈴虫の音など、そこが大きな喜びなのです。
そして、人工内耳の手術をされた60代の男性B男さんのケースです。補聴器では奥さんとだけで話していると話の内容はわかるのですが、そこにもう1人加わると、まったく会話が分からない状態。それで人工内耳の手術を決断されました。人工内耳にして1カ月後の声です。「耳先で音がしているのが補聴器。人工内耳は直に頭の後ろから大きな音が入ってくる、という感じでした。ただ、最初は雑音の多さにびっくりしました。今はこれ以上ない、というほど静かで聞き取りやすい状態に調整されています」と。
「家族の勧めがあって人工内耳を決断しました。本当に手術を受けて良かった、と今は思っています」。そして、手術から1年後、B男さんは「反対側の耳も人工内耳にしたい」と希望され、両耳とも人工内耳にされました。
B男さんに限らず、「良かったあ~」と多くの方に言ってもらっています。「音が聞こえる問題のない頃の生活。その時のような感じになっている」ということなのです。(医学ジャーナリスト 松井宏夫)

