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東京五輪・パラリンピック300回連載

バドミントン世界王者・桃田、アジア大会で2冠狙う

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 20年東京五輪への試金石となるアジア大会が18日、ジャカルタで開幕する。バドミントンでは世界選手権男子シングルスで初の金メダルを獲得した桃田賢斗(23=NTT東日本)に日本男子初の個人、団体2冠の期待がかかる。世界一にたどり着いた強さの秘密や大会に向けた抱負を聞いた。【取材・構成=高場泉穂】


「人として強くなる」と目標を書いた色紙を手にする桃田(撮影・林敏行)
「人として強くなる」と目標を書いた色紙を手にする桃田(撮影・林敏行)

 世界からアジアに勝負の場を移しても、桃田の意欲は変わらない。「世界チャンピオンとして簡単に負けられない」と自らプレッシャーをかけ、心を燃やす。

 バドミントンはどの種目もアジア勢が世界ランク上位を占め、アジア大会は2年後に迫った五輪の指標となる。日本は女子が過去シングルス、ダブルス、団体で優勝実績はあるが、男子はなし。桃田には個人、団体初の金メダルが期待される。組み合わせに恵まれた世界選手権よりアジア大会の方が厳しい戦いになる可能性がある。

 世界選手権では、今の桃田の強さが如実に表れた。まずは身体面。極力スマッシュを打たない、異例の戦い方で世界一になった。腹筋に痛みを抱えていたため、守りを固め相手の体力を奪う作戦を取った。「準決勝、決勝では相手のショットを拾い、長いラリーに持ち込み、スタミナ的に自分のほうが勝った感じがした。相手にプレッシャーをかけられたので、それが自信になりました」。

 大舞台で発揮したスタミナは、この2年の成果だった。違法賭博問題が発覚し、練習を再開したのは16年5月。それ以来、ランニングを欠かさない。日本ではほぼ毎日朝と昼。海外遠征中でも負けるとマシンで1時間ほど走っている。「なぜ走るのか?」の問いには「置いていかれる気がするから」と言う。「(昨年世界王者の)アクセルセン(デンマーク)だったり、同世代の人が活躍しているので、やっていないと落ち着かない」。もともと持つ高い技術に、フィジカルを備えて戻ってきた桃田は既に最強の位置にいる。それでも「自分は挑戦者の気持ちでもっとレベルアップしていきたい。自分は進化の最中」と満足はない。

 心の強さも勝因の1つだった。実際、世界選手権の試合中に何度も「心が折れそうになった」と明かした。以前は1度だめだと思ったらその1点を捨てることもあった。だが、今回はきつくても足を動かすことをやめなかった。桃田は「簡単に負けるわけにはいかない。下手な試合はできないという強い気持ちがある。全然違う」と話す。

 試合に出られない間、チームメートの練習相手を務め、シャトル拾いを率先するなど、それまでのエリート人生で無縁だったサポート役を経験し、競技ができるありがたみをあらためて学んだ。「下手な試合はできない」という必死のプレーの根底には支えてくれる人への感謝の思いがある。

 実戦復帰した昨年は、見られることを意識し、萎縮していたこともあった。今年1月、日本代表に復帰したことで肩の力は抜けた。「代表に選んでもらったことで『やるしかない』という環境になった。今はコートの中でしっかり自分らしさを出せている」。心身の成長が桃田の強さを支えている。

 16年リオ五輪に出られなかった分、東京五輪への思いは強い。「期待し、応援してくれていた人を裏切ってしまって、申し訳なく思っている。自分が五輪で優勝したいというより、期待に応えたい気持ちがある。その方法が勝つこと。出るからには金メダルを目指したい」。

 アジア大会でも頂点を目指す気持ちに変わりはない。「守備は通用すると感じられたので、あとは自分の決め球の精度をあげられるか。団体戦でも攻撃面をスキルアップして、チームを引っ張っていけるように」と攻めて、2冠を狙う。

 ◆桃田賢斗(ももた・けんと)1994年(平6)9月1日、香川県三豊市生まれ。吉津小2年でバドミントンを始める。福島・富岡高3年の12年世界ジュニア選手権で日本人初優勝。14年国・地域別対抗戦のトマス杯で日本初優勝に貢献。15年世界選手権銅メダル。同年スーパーシリーズ(現ワールドツアー)ファイナル優勝。16年4月に違法賭博問題が発覚。無期限試合出場停止処分でリオ五輪に出場できず。17年5月に処分解除、18年1月に日本代表復帰。18年8月、世界選手権で日本男子初の金メダル。家族は両親と姉。175センチ、68キロ。左利き。血液型A。


●バドミントン

 7種目すべてで金メダルを狙える。注目は女子ダブルス。世界選手権メダリスト3組のうち金の永原和可那、松本麻佑組と米元小春、田中志穂組(以上北都銀行)は出場せず。銀の福島由紀、広田彩花組(岐阜トリッキーパンダース)に初優勝の期待がかかる。世界選手権3回戦敗退の高橋礼華、松友美佐紀組(日本ユニシス)は地力を出せれば前回銀に続く2大会連続メダルに届く。

バドミントン女子の高橋礼華(左)と松友美佐紀
バドミントン女子の高橋礼華(左)と松友美佐紀

●陸上

<男子400mリレーは初組み合わせで挑む> 男子400メートルリレーは5大会ぶりの金メダルを目指す。第1走者から順に山県、多田、桐生、ケンブリッジの予定。カギとなるのは多田と桐生のバトン受け渡し。第2走者が定位置で完璧な連係だった飯塚が1600メートルリレーに回り、初の組み合わせで挑む。

 銅メダルだった昨夏の世界選手権は第1走者だった多田は、カーブより直線が得意で、第2走者の方がスピードは生かせそう。しかし、上体が立って走る独特の走法だけに1度目線を下げ、桐生の腕の高さを確認してバトンを渡す。多田は「なかなか難易度が高い」と笑うが「スムーズにいけるように」と微調整を重ね、完璧にするつもりだ。

 最大のライバルは蘇炳添、謝震業と2人の9秒台スプリンターをそろえ、前回優勝の中国。過去4年、日本が予選敗退で直接対決していない15年世界選手権も含め中国との対戦成績は3勝2敗となっている。

○…6月に100メートルアジアタイ記録となる9秒91を出した中国のエース蘇は金メダルを意識しない。アジア大会は「今年一番重要な大会と位置付けしていない。ダイヤモンドリーグなど世界レベルの大会に力を入れてやっていきたい」と話す。世界選手権男子100メートルでは2大会連続で決勝に進出するなど、日本人スプリンターの先を行く蘇は「どんな大会であろうと同じ気持ちで、ベストを尽くすことが目標」と平常心で挑む。

リオ五輪での男子400メートルリレーの様子
リオ五輪での男子400メートルリレーの様子

●バレーボール

 女子は9月29日から日本で開催される世界選手権をにらんだ戦い。左膝故障で昨季全休の長岡望悠(久光製薬)が復帰するが、得点源として機能できるか。ベテラン荒木絵里香(トヨタ車体)も今季初戦で、新戦力の黒後愛(東レ)らとの連係を確認しながら3大会ぶりのメダルを目指す。男子は9月9日にイタリアで開幕する世界選手権へ主力は調整に専念し、セカンドチームが出場する。

バレーボール女子の長岡望悠
バレーボール女子の長岡望悠

●競泳

 女子の池江璃花子(ルネサンス)が、14年仁川アジア大会の萩野に続く大会MVPを狙う。個人種目ではバタフライ、自由形でそれぞれ50メートル、100メートルと4冠が視野に入る。個人3冠でMVPをとった萩野を上回る可能性がある。競泳で大会MVPとなった北島、萩野はともに五輪でも金メダルを獲得している。池江も偉大な先輩のようにジャカルタで弾みをつけて、大爆発を狙う。

競泳女子の池江璃花子
競泳女子の池江璃花子

●柔道

 男子は16年リオデジャネイロ五輪金メダルの73キロ級大野将平(旭化成)と同90キロ級ベイカー茉秋(日本中央競馬会)に注目。大野は天理大大学院での学業を優先した昨年は長く実戦を離れ、ベイカーは右肩手術から今年2月に復帰。ともに復調の兆しを見せている。女子は48キロ級にリオ五輪銅メダルの近藤亜美(三井住友海上)、78キロ超級に全日本女子選手権を制した18歳の素根輝(福岡・南筑高)が臨む。

柔道男子の大野将平
柔道男子の大野将平

●サッカー

 東京五輪世代であるU-21日本代表が参加する。森保一監督は、A代表との兼任が決まってから初めての国際大会となる。今後は若い世代でも、選手に可能性を見いだせば積極的にA代表の活動にも合流させる考えを持っている森保監督。東京五輪、そしてその先の22年W杯カタール大会を見据えて、若い選手たちのサバイバルレースが始まる。指揮官は目標を最低4強とした。

サッカー男子代表の森保監督
サッカー男子代表の森保監督

●レスリング

 前回大会4階級中3階級を制した女子は、今大会も強力布陣。中心は、62キロ級に出場する16年リオ五輪63キロ級を制した川井梨紗子(ジャパンビバレッジ)。昨年の世界選手権も制し金メダル有力候補。昨年の世界女王で53キロ級の奥野春菜(至学館大)、57キロ級の坂上嘉津季(ALSOK)にも期待。男子はフリースタイル57キロ級で昨年の世界選手権王者の高橋侑希(ALSOK)に注目が集まる。

レスリング女子の川井梨紗子
レスリング女子の川井梨紗子

 ◆アジア大会 アジアオリンピック評議会(OCA)が主催するアジア地域を対象とした国際競技大会。原則4年に1度で五輪の中間年に開催。第1回は夏季が51年ニューデリー大会、冬季が86年札幌大会。今回のジャカルタで、夏季のアジア大会は第18回になる。

<eスポーツも実施> 20年東京五輪で採用されている種目の他に、アジアの地域性を反映した競技も大会の魅力だ。90年北京大会から男子は全7大会、女子も10年広州大会から全2大会でインドが金メダルを獲得しているカバディはその典型。日本が発展に大きく貢献したソフトテニスも採用されており、今大会からは開催地のインドネシア発祥の武術である、プンチャック・シラットも正式種目となった。デモンストレーション競技としてはeスポーツも行われ、人気サッカーゲームの「ウイニングイレブン2018」などの日本代表が選ばれている。


日刊スポーツが2020年東京五輪・パラリンピックに向けて毎週お届けする300回の大型連載です。ここでしか読めないスペシャルな話題満載です。

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