来夏に延期された東京オリンピック(五輪)に向け、新たな「闘い」が始まります。新型コロナウイルスと共存しながら、本番までの1年2カ月を有意義に使うことが首脳陣に課せられた課題です。女子は全7階級の五輪代表が決まりましたが、強化プランの変更や練習方法などを見直す必要があります。合宿日程は現在も未定で、選手にはウェブミーティングで、所属での練習状況や困っていることなどを聞き、少しでも不安を取り除いてやりたいです。まずは、体力面の回復とメンタルケアに重点を置き、焦らず段階的に強度を上げていきたいです。

監督に就任して4年目です。16年8月に金野潤強化委員長から打診された時は、「青天のへきれき」でした。世界選手権や五輪経験のない自分で本当に良いのか。しかも、次は自国開催の東京五輪。不安な面もありましたが、世界の経験がないからこそ、実績のある優秀なコーチやスタッフをそろえ、選手の主体性を大事にした選手目線での指導を心掛けました。お恥ずかしい話ですが、現役時代は気持ちが弱く、妥協するタイプでした。自身の経験談を踏まえて、頭ごなしにやらせるのではなく、自ら考えて取り組む方が好成績につながると学んだため、自分自身で課題を発見させることを常に念頭において指導にあたっています。

五輪は08年北京、12年ロンドン、16年リオデジャネイロの3大会を現地視察しました。リオ大会では、勝負の難しさを痛感しました。筑波大の教え子の男子81キロ級永瀬貴規(26=旭化成)が世界王者として臨み、負けたことのない選手に負けました。普通にやったら勝てる相手に足をすくわれました。時間経過とともに表情が焦り、その焦りが勝敗を分けたと感じました。五輪のような大舞台で勝機を見いだすためには、試合中に「これまでと何か違う」と相手に思わせるような、相手が想定しない武器を1つ持つことが大事と考えました。

コロナ禍の影響で国際大会の開催は不透明ですが、柔道の場合、国内に強豪選手がたくさんいます。海外からすれば、恵まれた環境です。本番までに日本柔道が一致団結することが、金メダルへの近道だと信じています。(304人目)