16日に行われた平昌五輪フィギュアスケート男子ショートプログラム(SP)。66年ぶりの2連覇を狙う羽生結弦(23=ANA)が111・68点で首位発進を決めたが、出場選手のハイレベルな争いは、8年前のバンクーバー五輪はもとより、4年前のソチ五輪と比べても隔世の感を覚えるものだった。

 注目したのは認定された4回転ジャンプの数。バンクーバーでは30選手で4人、ソチでは29選手で16人、平昌では30選手で18人と「微増」だったが、目を見張るのはその内訳。2種類に挑んだ選手が0人→1人→9人と激増していた。

 口火を切ったのは3番目に登場した17歳のビンセント・ゾウ(米)だった。17年世界ジュニア王者は五輪史上初めて4回転ルッツを成功。さらに4回転ルッツ-3回転トーループの連続ジャンプを着氷し、2度の4回転で会場を沸かせた。14年ソチ大会ではケビン・レイノルズ(カナダ)1人だった2種類ジャンパーを振り返ると、その後の「新4回転時代」の進歩の速さがうかがわれる。

 羽生、宇野ら最終組の6人のうち5人が2本の4回転を跳んだ。その数は最終的には計9人。その種類もソチではトーループ、サルコーまでだったが、フリップ、ルッツまで加わり、一気に技術レベルが押し上がった。

 4回転は16年4月に宇野昌磨がフリップを成功させると、羽生は同年10月にループを成功させた。後輩に負けじと限界を押し広げてきた五輪王者は、あとに続く若者たちを従えた。この日争った18歳のネーサン・チェン(米国)、20歳の金博洋(中国)、そしてゾウにしても、突破者がいたからこそ現実味を持って大技に挑戦できたのだろう。

 17日のフリーでは、何種類、何本の4回転が跳ばれ、どんな進歩が刻まれるだろうか。