東京オリンピック(五輪)・パラリンピック大会の選手村として東京・中央区晴海に建設中で大会後に大規模な分譲マンション群となる「晴海フラッグ」が、大会の1年延期を受けて『激震』に見舞われている。大会後にリニューアルし、23年3月下旬から入居開始の予定で940戸が販売済みだが、約3200戸は未販売のままだ。入居が1年あまりもずれ込めば、購入者や購入予定者への影響が避けられない事態に陥っている。

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東京五輪・パラリンピックのレガシー(遺産)になるはずの選手村が、コロナショックに揺れている。計画は、都心臨海部の埋め立て地に全24棟5632戸(分譲4145戸)のマンション群と商業施設などが誕生し、約1万2000人の居住が見込まれる前代未聞の巨大プロジェクト。昨年から分譲販売がスタートし、すでに計940戸が販売済み。大会後に内装などをリニューアルし、23年3月下旬から入居開始の予定だった。

だが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響による大会の1年延期で、予定された入居開始の時期も遅れることになった。3月下旬に予定された次期販売分は4900万円台(2LDK)~2億2900万円台(4LDK)の物件で、最多価格帯は6400万円台で設定されていたが、6月以降に延期。残りの約3200戸の分譲販売も含め、事業主の大手デベロッパー10社は戦略の見直しを迫られることになりそうだ。

入居時期がずれ、契約者と入居遅延や手付金などの問題が浮上する。「購入されるメイン層は年収1200万円~1500万円の世帯と思われます。子どもの進学時期に合わせて契約される場合が多い。1年ずれても大変なことになる」と、不動産コンサルタントの長嶋修氏(52)は指摘。「契約時の手付金は通常、価格の5~10%。引き渡しの遅延が売り主の責任にあたらないとなれば、キャンセルには手付金を放棄することになる」(長嶋氏)。

選手村は21棟3800戸の宿泊棟(1人部屋~8人部屋)や、4500席の食堂などを整備。小池百合子都知事は、新型コロナウイルスの軽症、無症状患者の一時滞在先として選手村の活用案に言及したが、長嶋氏は「オリンピックの選手村のイメージが購入動機の方が多いと思う。ひとつのブランドでレガシー」と分析。新型コロナ対策の施設として使用された場合も、購入者や販売に影響する可能性が出るかもしれない。【大上悟】

◆晴海フラッグ 東京五輪・パラリンピックの選手村として東京・中央区晴海5丁目に建設中。総面積は13ヘクタール。大会後にリニューアルされて全24棟5632戸(分譲4145戸)のマンション群となる。「パークビレッジ」「シービレッジ」「サンビレッジ」の街区に商業施設や保育施設、公園などが整備され、約1万2000人の居住が見込まれている。昨年夏に第1期第1次販売が終了し、「パークビレッジ」は610戸、「シービレッジ」は330戸が販売済み。バス高速輸送システム(BRT)で新橋、虎ノ門方面へ直通運転で結ばれる予定。

◆長嶋修(ながしま・おさむ) 1967年9月12日生まれ。不動産コンサルタント(国土交通大臣認定)、日本ホームインスペクターズ協会理事長。国土交通省の不動産流通市場活性化フォーラムの委員などを務めた。