24年1月1日現在で、ボートレーサーの数は1604人。レーサーたちの趣味もキャンプや釣り、車やバイク、スポーツ観戦やほかの公営競技など多種多様だ。漫画やアニメ、ゲームが好きな選手も多く、ピットでは作品中のロゴやイラストが入ったシャツやレーサーパンツを着用する姿も見られる。
中でも、年2回開催される世界最大級の同人誌即売会、コミックマーケット(以下コミケ)に参加する選手がいる。その1人、西舘健(38=東京)は23年後期の適用勝率(審査期間22年11月~23年4月)が4・30だったが、24年前期(同23年5~10月)は8月戸田(2着)などで2度優出して、適用勝率を自身最高で、A級目前の5・40まで大きくジャンプアップさせた。
飛躍のきっかけは、けがだった。「22年10月に左手を骨折して、手術をした。(23年1月平和島で)復帰する前にボートに乗ったら手や体の反応が鈍くて、1から探りながらだった。その中で、今までおろそかにしてきたところを固められた」。自分を見つめなおした結果が、思った以上に成績につながり、自身でも驚いたと話す。
小学生のころにボートレースファンの父と一緒に平和島ボートへ行き、自然とボートレーサーの道を選んだ。そして同時期から漫画やアニメを見るようになった。「スラムダンクが流行りだしていたころで、ドラゴンボールもよく読んでいた。今でも週刊少年ジャンプを毎週読んでいる。夏休みには、アニメのタッチを見ていた」と懐かしむ。
そしてあるアニメから、コミケに関心が向いていく。「シュタインズ・ゲートを見てから(コミケに)興味を持つようになった。小林泰(39=東京)と森作雄大(35=東京)との3人で、コミケの時期に(あっせんが)空いていたから行ってみよう! となって行ったのが最初です」。1日あたり10万人超の参加者が殺到する中で、自主作成の同人誌やコスプレイヤーなど、さまざまな表現を楽しむようになっていく。「レース場でもカタログを持ち込んで(同人誌を作る)サークルをチェックして、開催が終わった後で調べる。以前は単独で動いていたけど、今は安田(吉宏、37=三重)と協力している」と笑顔で醍醐味(だいごみ)を語った。
コミケはモチベーションとなっているか? との問いには「そこまでではないですかね(笑い)。周りの参加者ほどの熱量ではないけど、楽しみのひとつで息抜きになる」。欲しいもののために何が何でもではなく、マイペースで楽しんでいる。それでも「胸を張ってコミケに行けるようにいい成績で頑張らないと、と使命感を持ってレースをしています」と口元を引き締める。ボートレーサーと趣味をしっかり切り替えて、ともに全力投球をする。
以前にも競馬の騎手、競輪選手などもコミケに参加して、中にはコスプレやサークル参加をする姿もあった。西舘は「(同人誌作成は)やってみたいけど、特技を聞かれると…、何だろう(笑い)。仕事以外の事で、個人でやりたいですね。例えば、見たアニメの考察する本とか。やれたら面白そうですね」とまんざらでもない様子だった。
23年12月30、31日にお台場・東京ビッグサイトで開催された、コミックマーケット103。コロナ禍で減少した来場者数は、8月のコミケ102から1万人増の27万人を数えた。企業ブースでは多摩川ボートが参加して、プレミアムG1クイーンズクライマックスの放映とともに、実際のボートを展示していた。記者がブースで取材をしていると西舘、安田、酒見峻介(38=佐賀)とばったり会った。聞けば待ち合わせをして一緒に来たとのこと。みんな成果を得ていたようで、西舘は「ぼちぼちです」と満面の笑み。さらには、西舘がボートに乗ってモンキーターンなどのポーズを取り、立ち止まって撮影する参加者にボートレースをアピールした。
レースに集中して、サブカルチャーでリラックスする。好循環を作る西舘がさらに進化して、初のA級取りを狙う。【田中大樹】

























