トップコーチたちやPGAツアーの取材で、たびたび海外に行くことがある。仕事柄という事もあるが、行く先々で機会があればゴルフ雑誌に目を通すようにしている。そこで気が付いたのが、日本のゴルフ雑誌のホスピタリティの高さだ。日本のゴルフ雑誌に詰まった「おもてなしの心」を紹介する。


●総合掲示板のような海外の雑誌


 日本のゴルフ雑誌は親切だ。正確に言えば、最初は日本のものが当たり前だと思っていたから、海外のゴルフ雑誌を見たときに「とても分かりづらく不親切だ」と感じた。

 まず見た目。コーチやプロが出てきてレクチャーをするという大枠は同じなのだが、写真のどこがポイントなのか、一見しただけではわからない。一方で日本の雑誌は大事な部分にフォーカスしていたり、線や矢印で何を大事にすればよいかがわかるようになっている。文章まで細かく読み込まなくても、「そこが大事なのね」というポイントがつかみやすい。

 海外のものは、「コーチやプロがこう言っていた」というものをただ載せているだけのことが多く、どんなことがポイントなのかや、それができるようになるために何をしなくてはいけないのかという詳細なステップが書かれていない事が多い。一方の日本の雑誌は、練習法やドリルといった形で実際にすべきことまで書かれているため、概念の理解にとどまらず実際に取り組みやすいように工夫されているのだ。


●ゴルフ雑誌を読んでも上達しない人の特徴


 そんな丁寧に作られた日本のゴルフ雑誌だが、アマチュアからは「何年読み続けていても、上達につながらない」という声をよく聞く。結論から言うと、それは読み方が間違えている。雑誌に登場するのは高度な技術を持ったコーチやプロ(ときにはトップアマ)だ。彼らに取材をしている以上、(多少の誇張はあるかもしれないが)どの雑誌でも「ウソ」は書いておらず、載っている情報はすべて正しい。

 ただし読者は年齢や骨格、ゴルフのレベルが異なる。だから自分に合ったレッスンを見分けて取り入れるべきなのだ。全ての記事のレッスンをくまなく試してみても、上達にはつながらない。

 例えばツアープロによるレッスンの記事。彼らは高い技術力を持っているが、その技術を日常的に他人に教えているわけではないので、どうしても感覚的な表現になりがちだ。だからある程度、ハンディキャップの低い人やゴルフ歴が長い人が感覚やイメージを取り入れるのに使うのがよい。彼らしか持っていない成功体験は、上級者にとって何らかのヒントになるはずだ。

 次にレッスンプロやコーチの記事。私も含めて彼らは特定の人に合った情報を伝えることを仕事としている。だから、ツアープロたちの語るものよりは具体的なものが多い。しかしコーチにもいろいろな種類の人がいる。自分の理論を持っている人、テーマに合わせて最適な情報を提供する人などなど。だから読む前に、その人やその記事はどういうものを目指しているのかを把握して、それが今自分のスイングに取り入れるべきかを考えて欲しい。「正しいスイング理論が書いてある。だから全部試そう」と思って読むと、スイングの方向性が破たんしてしまうだろう。

 情報を集めることはとても良いことだと思う。その探究心はとても大切だ。しかしそれをすべて試そうとしてしまうことが危険なのだ。「多種多様なスイング理論があって、自分に合いそうなものはこれだ」というように接すると、スキルアップの手助けとなってくれるはずだ。

 ゴルフ雑誌は上達方法のカタログだと思うとよい。実際に読んでみて試した結果、しっくり来たり自分の思い描くものと近いことを言っている人がいれば、ぜひ直接習いに行ってみてほしい。そんな情報の入り口が500円程度で買えるというのは、個人的にはとてもお得だと思う。

 ◆吉田洋一郎(よしだ・ひろいちろう)北海道苫小牧市出身。シングルプレーヤー養成に特化したゴルフスイングコンサルタント。メジャータイトル21勝に貢献した世界NO・1コーチ、デビッド・レッドベター氏を日本へ2度招請し、レッスンメソッドを直接学ぶ。欧米のゴルフ先進国にて米PGAツアー選手を指導する80人以上のゴルフインストラクターから心技体における最新理論を直接学び研究活動を行っている。書籍「ロジカル・パッティング」(実業之日本社)では欧米パッティングコーチの最新メソッドを紹介している。オフィシャルブログ http://hiroichiro.com/blog/

(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ゴルフスイングコンサルタント吉田洋一郎の日本人は知らない米PGAツアーティーチングの世界」)

自分に合ったレッスンを取り入れるべき
自分に合ったレッスンを取り入れるべき