14日にロンドンで開幕する世界パラ陸上選手権。3年後の東京パラリンピックを見据え、日本の若きパラアスリートたちが夢へ第1歩を踏み出す。


佐々木真菜 視覚障害T13

日本記録今季5度

 レコードガールの勢いが止まらない。女子視覚障害T13の佐々木真菜(19=東邦銀行)は今季、200メートルで2度、400メートルで3度日本記録を更新してロンドンに乗り込む。生まれながらの弱視でコースのラインも1メートル先までしかはっきり見えないが、健常者の部員と同じ練習で力をつけてきた。社会人2年目を迎えて下半身の筋力がアップし、レース後半でも失速しない走りが特長だ。「課題はスタートダッシュ」と言うように、最初の20メートルでトップスピードに乗れれば世界でも戦える。「200は26秒台前半、400は59秒50で走りたいです」。ロンドンでも記録ラッシュが続くようなら上位入賞、表彰台の夢もふくらむ。

日本パラ陸上選手権の女子400㍍T13、T47決勝・佐々木真菜
日本パラ陸上選手権の女子400㍍T13、T47決勝・佐々木真菜

池田樹生 切断などT44

バトンパス完璧に

 切断などT44の池田樹生(20=中京大)は、昨年のジャパンパラ大会400メートルで57秒40の日本記録を樹立した。初出場となる世界選手権へ向けて、「欧州はパラスポーツが盛ん。その本場で走れるのはうれしい」と話した。

 先天性の障害で右の膝下、右肘の先がない。高校時代にパラアスリートの山本篤の活躍を知り陸上を始めた。今季、400メートルリレーではその山本からアンカーの座を引き継いだ。リオ大会で銅メダルを獲得し、世界選手権でもメダルの期待が高い種目。6月の日本選手権では3走の多川とのバトンパスが合わずに止まってしまう場面もあったが、44秒91の好タイムでゴールした。リオ大会の44秒19には届かなかったが、「ミスをしてもこの記録。世界選手権ではバトンパスを完璧にして43秒台を目指したい」と意気込みを示している。

日本パラ陸上選手権の男子100㍍・池田樹生
日本パラ陸上選手権の男子100㍍・池田樹生

西勇輝 車いすT54

走り込み1日20キロ

 車いすT54の短距離は西勇輝(23=野村不動産パートナーズ)が初の世界選手権出場権をつかんだ。6月の日本選手権ではライバルの生馬知季(25)に100メートルで敗れたが、200メートルでは最後にかわして優勝した。

 「今は2人で切磋琢磨(せっさたくま)する気持ちになれた」

 先天性の二分脊椎(せきつい)症。小5で陸上を始め、13年のアジアユースパラ大会で100、200、400を制覇したが、リオ大会は出場を逃した。1年前からソウルパラリンピック銀メダリストの永尾由美氏の指導を受けている。「1日20キロ以上の走り込みを続け、後半のスピードを上げることに注力してきました」。最高速度は昨年の時速31キロから35・6キロに。「メインは100メートルですが、400メートルでも記録が伸びてきた」と手応えをつかんでいた。


鈴木朋樹 車いすT54

2年いろいろ経験

 車いすT54の鈴木朋樹(23=トヨタ自動車)は「まず、決勝に進むこと。そして3位以内に入りたい」と800メートルでの表彰台に照準を定める。

 前回、15年のドーハ大会に初出場し、同種目で準決勝止まりと世界の壁を痛感。リオの代表も逃し、体幹強化、スプリントの向上に励んできた。「僕もこの2年、いろいろ経験を積んできたので」。東京マラソンも2度走って2位、3位と激しい駆け引きへの対応力も備わっている。標的はドーハ優勝、リオでも金メダルのフグ(スイス)。「先頭には立てないと思う。いい位置につけてラストスプリント勝負。勝ちたいですね」と具体的なレースプランを明かした。本心では表彰台の一番上を狙っている。


渡辺勝 車いすT54

用具から全て見直し

 リオ大会の出場を逃した車いすT54の渡辺勝(25=凸版印刷)は、2月の東京マラソンでリオ大会の金メダリスト、フグ(スイス)を制して優勝。5月のスイス国際大会では5000メートルで9分50秒55の日本記録を樹立した。世界選手権では1500メートルと5000メートルでメダルを狙う。

 交通事故で車いす生活となった11年に陸上を始めた。13年の世界選手権1万メートルで銀メダルを獲得したが、その後は伸び悩んだ。リオ大会落選後はすべてを見直した。「レーサーのポジションや使用するグローブなど、用具も全て一新しました」。練習ではコーチに自転車で並走してもらい、限界を超えるスピードに挑戦している。「これまではひたすら体力勝負でしたが、最終ラップでスプリント勝負したい」と心機一転、再び世界に挑む。

左から渡辺勝、鈴木朋樹、西勇輝
左から渡辺勝、鈴木朋樹、西勇輝

 ◆世界パラ陸上選手権 国際パラリンピック委員会(IPC)が創設し、1994年にドイツ・ベルリンで第1回が開催された。当初は4年に1度だったが、11年から2年に1度の開催になった。今年は7月14日から23日までロンドンの五輪スタジアムで開催される。


 ◆テレビ放送 NHK・BS1で7月15~24日の午後1時~1時50分まで毎日録画放送。当日の深夜にも再放送予定。


世界パラ陸上 日本代表一覧
世界パラ陸上 日本代表一覧