東京五輪はプロジェクターと小さなテレビの2台で日本の中継、PCのモニターで米NBCの中継を、計3台で同時に見ています。

スケートボードは本場の米国でも話題です。特に女子で金メダルを取った西矢椛さんのその若さが注目されていました。スケボー好きは日本が台頭しているのは分かっているので、堀米雄斗君の金メダルにはそんなに驚いていないですね。

スケボー男子はNBCで見ましたが、解説者は堀米君のパフォーマンスを「メッチャやばいパフォーマンスだから、(金メダルは)しょうがない」と。NHKでも「メッチャやばい」などと、フランクに解説されていたのがいいなと思いました。スケボー文化が、ストリート系の日本語がNHKでこんなに流れることがあるんだと。うれしかったし、おもしろかったです。

日本では局アナがオーソドックスな放送規範に沿って実況します。米国のスポーツ中継は実況も解説もそれぞれその道のプロが担当するので、個性的で味がある。スケボーやサーフィンの解説は「メッチャやばい」系統のコメントなので、いつもおもしろいですよ。

僕は東京五輪・パラリンピック開催賛成派でした。スポーツ選手も仕事をする権利がある。ただ、議論がほぼないまま、政府が開催を決断してしまった。まず議論の場を設けていたら、今夏の開催に反対する声が多かった世論は違っていたかもしれません。

ロシア、中国では五輪は政府のものですが、米国では政府が五輪にあまり関わりません。日本ではこれだけ首相が五輪に関わるのは、米国人から見たら不思議かもしれません。

日本では五輪放送権を放送局同士で分け合い、みんなで盛り上がる。米国ではNBCだけが放送権を持っているので、他局は視聴率を失わないよう五輪で盛り上がらないようにします。米国でも皆、獲得メダル数とか気にするのは間違いないですが、日本ほど一丸になって応援していません。

五輪が始まると、米国でもそれなりに注目されます。米国の友達や親戚のSNS上でも五輪の話題が出ています。ただ、ワクチン接種も進み、やっと普通の生活に戻れるところで、わざわざテレビの前に座りこむかと言った人もいました。出掛けられるようになったので、米国で東京五輪の視聴率は取れないのでは、といった推測もあります。

今回、無観客で使われた後、解体され、歴史から消えてしまう会場も結構あります。レガシーを考えるとちょっと悲しい。運営側のエラーやオウンゴールが目立ち、ファインプレーもあまり見られない。何が残るのかというと、選手の力に頼って、スポーツの力で見た感動。運営側がこのコロナ禍で、多くの人が五輪・パラで感動できる場を与えてくれて良かった、と思うようになれば、それが一番のレガシーになるのかな。【聞き手・近藤由美子】

◆パックン(パトリック・ハーラン)1970年11月14日、米コロラド州生まれ。ハーバード大学比較宗教学部卒業後、来日。英語講師を経て、お笑いコンビ「パックンマックン」を結成。NHK「英語でしゃべらナイト」などで一躍人気に。東工大非常勤講師も務める。米大統領ウオッチャーとして知られ、「大統領の演説」(角川書店)などの著作もある。連載、著書も多数。血液型O。