「そだね~」。テレビから聞こえる北海道のイントネーションに、ほっこりとする。五輪で見るカーリングは、選手の生の声がマイクを通して伝わるのが魅力の1つ。チームごとに、選手ごとに特徴がある。激しく怒鳴り合うチームもあれば、すべてスキップに任せるチームもある。声を聞いているだけでも楽しい。

 長野オリンピック(五輪)男子代表スキップの敦賀信人氏は「カーリングで大切なのは、コミュニケーション」と話す。1投ごとに変わるストーンの位置、変化する氷の状況、相手との駆け引き…。選手たちは意見を出し合い、ベストな作戦を練る。卓越した技術も、戦略があってこそ。「氷上のチェス」と呼ばれるゆえんでもある。

 今大会。男子はSC軽井沢ク、女子はLS北見が日本代表として戦う。他競技なら選手を集めて「代表」だが、カーリングはクラブ単位。「何で選抜チームにしないのか聞かれますが、絶対にうまくいきません」と敦賀氏。4番打者を集めても強い野球チームができないのと同じ。そこが、カーリングの奥深さだ。

 選手の役割は明確。リードは常に最初に投げる。得点するのはフォース(多くはスキップ)。スキップは作戦を立てて、他の選手に指示を出す。3人はスキップのために働く。圧倒的な「王様」のスキップを頂に、堅固なピラミッドを作るのがチームワークだ。

 SC軽井沢クは10年以上も同じメンバー。「両角王国」は万全だ。「女王」争いが激しい女子は、離合集散の繰り返しも多い。LS北見は10年にチーム青森を脱退した本橋が設立、14年に北海道銀行から吉田知、15年に中部電力から藤沢が加入。本橋が1歩引き「藤沢王国」を完成させた。

 2年前の世界選手権、銀メダルで帰国した藤沢は激戦で声が出なかった。サードの吉田知が「ここがゴールではない、と言っています」と通訳し、チームワークの良さを見せた。支える力が強ければ「女王」も強くなる。温かく、ゆるーく、それでも強い「そだね~」が聞こえている限り、チームの快進撃は続きそうだ。【荻島弘一】