カメラマンは最前線で写真を撮っている。しかし、決定的瞬間を見逃すことがある。今大会はジャンプやスピードスケートなど、夜遅くに競技が行われるケースが多く、締め切りに追われる毎日だ。

 日本が金メダルを獲得したスピードスケート女子団体追い抜きもそうだった。最優先は写真を撮り、日本に送信すること。競技を見る余裕はない。盛り上がる会場。気になる、見たい。後ろを振り向けばいいだけなのだが、それすら余裕がない。

 スノーボード男子ハーフパイプで連覇したショーン・ホワイト(米国)の演技も、優勝した瞬間はすぐ横にいたのに日本人選手の動向を追っていて見ていない。宿舎に戻り、テレビで「こんな光景だったんだ」と初めて知ることになる。せっかくの五輪を特等席にいながらじっくり味わえない。ジレンマを感じながらシャッターを押している。【写真部・黒川智章】