フィギュアスケート男子の田中刑事(23=倉敷芸術科学大大学院)が「切れない靴ひも」で初のオリンピック(五輪)に挑む。韓国入りから2日が経過した10日、江陵アイスアリーナの練習用リンクで調整。4回転トーループを何度も決め「ここに来る前もしっかり練習してこられた」と自信をのぞかせた。

 昨年2月の4大陸選手権で五輪会場は経験済み。だが、格を上げた舞台では予想外の事態も多く起きる。田中は黒い靴に装着した靴ひもを指さし「感覚は変わらない。切れない安心感があるだけで十分」と少しばかりほほえんだ。

 この靴ひもが「秘密兵器」だ。日本スケート連盟が筑波大と連携し、なじみやすく、切れない逸品を開発。五輪に同行する竹内洋輔コーチ(38)は「バンクーバーでの苦い経験」ときっかけを明かす。10年の同五輪では男子の織田信成がショートプログラム(SP)4位と好発進したが、フリーで靴ひもが切れて演技を一時中断するなど総合7位と失速。その失敗例から、スケート靴の刃で切れない素材を使用する靴ひもが完成した。昨季から使用する田中は「前のひもは結構切れていた」と効果を実感。出場が決定的な明日12日の団体男子フリーへ、安心感を味方にする。【松本航】