女子ショートプログラム(SP)で宮原知子(19=関大)が68・95点を記録し、4位となった。冒頭の連続3回転ジャンプが回転不足の判定を受け、自己ベストには5・69点及ばず。初めての五輪(オリンピック)で得た収穫と課題を、21日からの個人戦に生かす。日本はアイスダンスのショートダンス(SD)5位と合わせて上位5カ国のフリーに進出。ペアフリーまでを終えて5位となった。今日12日は男女とアイスダンスのフリーが行われる。

 日の丸を背負う仲間たちと、喜ぶ準備はできていた。坂本らのハグに出迎えられた宮原は笑顔で「キス&クライ」に座ったが、予想とは裏腹な5戦ぶりの60点台に「ジャンプ、全部アンダー(回転不足)取られたかな…」と表情を失った。心を落ち着かせ、各国の記者が集う取材エリアに進むと「演技自体は良かったので点数とかは悔しいけれど、スタートとしてはまずまず」と冷静に振り返った。

 6分間練習でリンクに立つと、フィギュアでは珍しい「テーハミング(大韓民国)」の大合唱を聞いた。同組に韓国人の崔多彬がおり「自国開催はすごいな」と思いながら、緊張感は高まっていった。演技直前、リンクの囲いが分厚いため懸念されていたルーティンを実行。浜田コーチとおでこを合わせ「ついた! よし」と送り出された。「ドキドキとワクワクとうれしさでいっぱい」と硬さがスッと消えていった。

 しかし、冒頭のルッツ-トーループの連続3回転ジャンプが、2本とも基礎点が0・7倍の回転不足判定。「あまり悪いジャンプと思っていなかった」という出来でも、過去5戦のSPで成功例が2度のみの「難関」に足をすくわれた。昨年12月の全日本選手権後にはつま先ではなく、エッジ(刃)の中央で降りる「ミッドフット着氷」を猛練習。つま先ではぐらついて次のジャンプへの移りが不安定なため集中的に取り組んできた。その苦悩が続く。

 3つのスピンとステップはいずれも最高評価のレベル4を記録。持ち味が認められているからこそ、21日の個人戦までに「いい時の感覚を忘れないでやることが大事」と回転不足解消の宿題に向き合う。2年前の高3時にしたためた卒業論文は「五輪に魔物はいるのか」。織田信成氏や荒川静香さんら5~6人に話を聞き「自分が勝手に作り出すのが魔物。自分を信じるのが一番」と結論づけた。だからこそ「このまま思い切っていきたい」と腹をくくる。個人戦では必ずや、心の底から笑う。【松本航】