V2へ完全復活を印象づけた。右足首故障からの復帰戦となるフィギュアスケート男子の羽生結弦(23=ANA)が12日、本番会場の江陵アイスアリーナのサブリンクで初練習を行った。トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を成功させると4回転ジャンプを跳ばず、40分の割当時間の約15分で切り上げた。6種類、計10本を跳び、笑顔で復調をアピール。男子では66年ぶりの五輪2連覇へ、まずは16日のショートプログラム(SP)に臨む。

 いつもと違うのは、リンクサイドのプーさんのティッシュボックスがショートケーキのに変わっていたぐらいだった。羽生は、いつも通りブライアン・オーサーら信頼するコーチ陣、菊地トレーナーに見守られながら、リラックスした様子でリンクに足を踏み入れた。

 注目される4回転ジャンプは、1本も跳ばなかった。跳んだのは1回転や2回転ジャンプ。跳べないのではなく、踏み切りや感覚を確かめるように、1本1本が浮遊するような余裕のあるジャンプだった。9本軽く跳んだ後、最後に勢いをつけ、羽生の武器ともいえるトリプルアクセルで締めた。やや着氷で乱れたものの、右足でしっかりと体重を受け止めた。右足を気にするそぶりは全くない。もう大丈夫、と示すには十分の出来だった。

 わずか15分で練習を切り上げると、軽くガッツポーズ。コーチ陣と固く握手を交わし、順調な仕上がりを喜んでいるようだった。同じリンクで久しぶりに一緒に練習した、同学年で親友の田中刑事は羽生の様子を見て、「思った以上に元気だったので安心しました」とほっとしていた。滑る前に「大丈夫?」と声をかけると、「うん、大丈夫」と返ってきたという。

 羽生は練習後は取材には応じなかったが、「お疲れさまでした。ありがとうございます」と笑顔で何度も口にし、会場を後にした。今日13日午前には本番のリンクで初練習し、その後に海外メディアを含めた記者会見を行う。復活劇の序章が、いよいよ始まる。【高場泉穂】