フィギュアスケート男子で66年ぶりの2連覇を目指す羽生結弦(23=ANA)が13日、江陵アイスアリーナの本番リンクで練習し、右足首を痛めてから初めて公の場で4回転ジャンプを決めた。4回転サルコーとトーループの2種類を計5度成功。直後の会見では、4回転ループへの挑戦をにおわせつつ、「作戦が大事。クリーンに滑れば絶対勝てる」と、金メダルに向けた臨機応変のジャンプ選択を示唆した。

 羽生の滑りが、すべてを物語っていた。五輪本番のリンクに、勝負のフリー曲「SEIMEI」が流れた。冒頭の4回転ジャンプは跳び損じ、2本目はスルーも、続く3回転フリップは決めた。ここからの後半が見せ場だ。4回転サルコー、4回転トーループ-からの連続ジャンプを2つとも流れるように成功させた。1カ月前に氷上に復帰したとは思えない美しい跳躍で復活をアピールした。

 直後の会見では、右足首を痛めた昨年11月からの経緯を語った。「トリプルアクセル(を跳べるようになったの)が3週前、4回転が2週間、2週半前だと記憶しています」。氷に乗れない間は、頭の中で何度も自分の跳ぶ姿を思い描いた。「2カ月間は無駄ではなかった。むしろ、たくさんのことを学べた」。痛みが治れば、頭で描いたイメージを形にしていくだけ。五輪を見据え、ブランクを短期間で埋めた。

 「クリーンに滑れば、絶対に勝てる」自信がある。この日、3カ月ぶりにフリーを披露したことで、本番のプランが見えてきた。羽生が跳べる4回転は4種類。そのうち、この日跳んだのは4回転トーループとサルコーの2種類のみ。フリーでは、2種4本がベースとなりそうだ。

 同じく4種を備える宇野昌磨や、さらに5種を跳ぶネーサン・チェンは、羽生より基礎点の高い構成となることが予想される。だが2人を含むどの選手も羽生がサルコー、トーループの2種だけで15年にマークした合計最高得点(330・43点)を超えることが出来ない。宇野は昨年末、フリー4種5本を回避し、五輪では3種4本にすることを決めた。「4回転時代」のトレンドは、難度から質へと移っている。技1つ1つに大きな加点がつく羽生には有利な状況といえる。

 だが、守るつもりもない。この日は、ケガをした4回転ルッツは跳ばなかったが、次に難しい4回転ループを跳ぼうとした。痛めた右足を軸に回るジャンプで、リスクは高い。会見でこの大技に挑むかを問われると「うーん、あんまり言うことはないかな」とけむに巻いた。「作戦が大事」。SPでリードできるか、ライバルが何を跳ぶか、滑走の順番は-。勝つためのジャンプは、ギリギリに決めることになりそうだ。【高場泉穂】