超ハイテンションで出陣だ。フィギュアスケート男子で66年ぶりの2連覇を狙う羽生結弦(23=ANA)が今日16日、ショートプログラム(SP)で右足首故障から約4カ月ぶりに実戦復帰する。前日15日は会場のサブリンクで調整し、大技4回転ループを含む、4回転を10本中8度成功させるなど絶好調。日本人金メダル第1号の重圧を問われると「誰が取ろうが、僕も取ります」と力強く宣言した。

 最終調整の終盤。羽生は流れるポップミュージックに頭を揺らしていた。先に練習を切り上げた金博洋、フェルナンデスに笑顔で拍手。最後はトップスピードでリンクを回って終了。ノリノリで取材エリアに現れると「順調に計画通りに出来ている。リラックスしながら出来ているので、非常にいいなと思われます」と笑顔。最終組1番の滑走順については「何よりも『だいっ好きな』1番滑走」と「大」を強調するなど、終始ハイテンションだった。

 昨年11月にNHK杯の公式練習で右足首を痛めてから3カ月。最後の試合となったロシア杯から4カ月。「公式練習をできていることが幸せ。足首のことや体のことを考えずに、スケートができるって幸せ」。強行出場しようとしたNHK杯も、治りかけだった12月の全日本選手権も欠場。ただただ、うれしかった。

 表情には自信が浮かんだ。ジャンプの高梨、スピードスケートの小平…。ここまで日本勢メダル候補は誰も頂点に届いていない。金メダル第1号の重圧を問われると「特にないです。誰が取ろうが、僕も取ります」と早口で即答。五輪男子シングルではディック・バトン(米国)以来66年ぶりとなる連覇をキラキラした瞳で見据えた。

 練習での滑りが自信を裏付ける。3回転で体を温めると、4回転を連続で跳び始め、現地入り後初めて挑んだ4回転ループもきれいに着氷した。4回転は10本中8本と高確率。最終組のライバルの前で跳べることを示した。13日の会見では4回転ループの導入には言葉を濁したが、この日は「はい」と隠さず答えた。

 今季は初戦オータム・クラシック、続くロシア杯も2位。勝ちに飢えている。昨年8月。故郷仙台の「勝負の神様」大崎八幡宮で必勝祈願した。16年リオ五輪前に福原愛が参拝し、卓球女子の団体銅メダルにつなげた五輪と縁ある神社。羽生の干支(えと)の戌(いぬ)の守護神でもある。18年戌年最初の大一番まで、神様はそのほほ笑みをとっておいたのかもしれない。

 気持ちを高揚させて思いを吐き出し、最後にサムアップポーズを作って会場を去った羽生。今日13時48分、世界にその滑りを見せる。【高場泉穂】