ショートプログラム(SP)でトップに立った羽生結弦(23=ANA)がフリーでも206・17点で計317・85点で、ソチ大会に続き連覇を飾った。右足首故障からの復帰戦で、SPに続き、ほぼ完璧な演技を披露。フィギュアスケート史上66年ぶりの連覇、日本人として初の冬季五輪連覇を成し遂げた。

 演技を終えると、右手でガッツポーズを繰り返す。そして右足をいとおしそうにさわった。「右足に感謝しかないです」。大好きな「クマのプーさん」のぬいぐるみがリンクにあふれる中で、何度も観客に頭を下げた。待機所で金メダルを確認するとテレビカメラに向かって「ありがとうございました」と涙を流しながら言った。2位に入った宇野昌磨(20)とも抱き合い、日本人初のワンツーフィニッシュを喜んだ。

 羽生 とにかく右足が頑張ってくれた。たくさんの方々に心配をかけて、サポートをしていただいた。

 4年前の金メダルは、栄光の始まりにすぎなかった。15年11月のNHK杯で史上初のフリー200点超え、合計300点超えを達成するなど、この4年間で、ショートプログラム3度、フリー3度、合計点2度と8度世界最高点を塗り替えた。トーループとサルコーの2種類だった4回転の種類も増えた。16年9月には、世界で初めて4回転ループを成功。そして五輪シーズンの17年11月、ずっと挑んできた4回転ルッツにも成功した。世界ランキング1位も1度も譲らなかった。自らフィギュアスケート男子のレベルを引き上げ、その先頭に立った状態で、2度目の五輪に臨んだ。

 「劇的に勝ちたい」。そのために、合計世界最高点の330・43点を出した2季前と同じSP、フリーを選んだ。さらに4回転は、自身最多のSP2本、フリー5本の計7本。最高難度のプログラムに挑戦するプランは、右足首のケガで狂った。跳びたかった4回転ルッツとループは回避。勝利のために4本に抑えた。

 4回転ルッツに成功した今季のロシア杯では、自分がなぜ難しいジャンプに挑むのか、こう答えていた。「今の最高得点はサルコーとトーループのみで勝ち取っている。そうすれば、ほぼすべての大会でノーミスできると思う。ただ、それをしてしまうと、自分がスケートをやっている意味がなくなっちゃう気がして…。スケートって芸術性も大事だし、そういうところに特化したいという気持ちももちろんあるんですけど、それじゃ試合じゃないだろうというのが僕の気持ち。僕にとってはジャンプは相棒的なもの」。

 2度目の五輪は、自分の限界に挑めなかった。まだ23歳。いつか、「試合で4回転アクセルを跳びたい」という夢に向かい、挑戦は続く。