日本勢の第1号メダルはW杯でも表彰台未経験の大学1年生だった。初出場の原大智(20=日大)が銅メダルを獲得。日本勢でただ1人上位6人による決勝3回目に進み、82・19点の3位となった。同世代で世界選手権2冠の堀島の陰に隠れていたが、大舞台で主役に躍り出た。モーグルだけでなく、エアリアルやスキークロスを含めたフリースタイルスキー全体でも日本男子初のメダル。ソチ五輪銀のキングズベリー(カナダ)が金メダルに輝いた。

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 両手を合わせ、原は祈るように得点が表示されるスクリーンを見つめた。82・19。銅メダルが決まった。両手を突き上げ、満面の笑みで王者キングズベリーと抱擁。ダークホースがモーグル日本男子初となる五輪メダリストとなった。

 原 ミスる気がしなかった。決勝を滑る時は楽しくて楽しくて仕方なかった。

 持ち味であるスキーの先を下へ、下へと向けて加速する滑りが光った。五輪での活躍を期し、夏場に苦手のエアを改善。大舞台でコーク720とバックフリップをミスなく決めた。決勝2回目も1位で通過。若さは勢いとなり、表彰台まで駆け上がった。

 亡き“兄”にささげるメダルだった。中学時代、川場スキー場で一緒に滑っていた「お兄ちゃんみたいな存在」がいた。平子剛さん。一緒に滑るだけではない。悩みを打ち明ける仲だった。卒業後、カナダへモーグルと語学勉強のため留学。「楽しいより、つらい思い出しかない」。そのつらさに加え、平子さんと突然の別れが13年8月に訪れた。死因は心筋梗塞。27歳の若さ。一報を聞いた時は「うそをつかれているんじゃないか」。棺おけの中の“兄”と対面し、現実を受け止めた。号泣し、告げた。「オリンピックに出て、金メダル取ります」。色は違ったが、日本モーグル界の歴史を変えた。「いいご報告ができるかな」と目頭を押さえた。

 同世代の堀島の陰に隠れているのが嫌だった。普段は仲がいいが、競技者としては悔しかった。自身を「目立ちたがり屋」という。注目されるのは「(堀島)行真ばかり。行真に勝ったという気持ちがすごく大きかった」。それが本音だった。昨年2月には「いつか2人で世界の金、銀メダルを独占したい」と誓った。女子が注目を浴びていたモーグル界。これからは20歳の同世代が男子の新時代を築く。【上田悠太】