「レジェンド」葛西紀明(45=土屋ホーム)は、21位だった。

 冬季大会最多8度目の五輪に臨んだ葛西だが、得意とはいえない小さな台で1回目104・5メートルで進んだ2回目も99メートルと失速。17日に行われる得意のラージヒルで巻き返しを狙う。小林陵侑(21=土屋ホーム)が日本人最高の7位で入賞を果たしたが、伊藤大貴(32=雪印メグミルク)は20位、小林潤志郎(26=雪印メグミルク)は1回目31位で2本目に進めなかった。

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 21位に終わった葛西は「まだ安定していない。テークオフのところで、かみ合わない部分があった」と首をひねった。8度目の五輪で初めて主将を務め、前日9日の開会式では旗手として日本選手団を率い「日本のために戦いたい」と気持ちを高めていた。この日は、今季取り入れている「飛ばない調整」で公式練習を回避。しかし、満足のいくジャンプはできなかった。

 それでも、気持ちは折れない。16日から始まる得意のラージヒルもある。「アプローチもよくなってきた。力の伝え方、方向性がうまく固まれば、いいジャンプはできると思う」と言った。世界中が憧れる「抜群の飛型」が持ち味。より発揮できるのは大きなジャンプができるラージヒルだ。

 飛型は、今も進化を続けている。ジャンプ選手の多くは飛行スタイルを変えないが、葛西は度重なるルール変更に対応し、その時代にあったスタイルを模索しながら確立してきた。20数年間も世界のトップと戦い続けてられたのは、そんな努力があったからだ。

 北翔大の山本啓三教授は、スキージャンプは「跳躍ではなく、飛行が目的」と話す。跳ぶのではなく、飛ぶ。葛西は世界一の飛型を次々と変化させ、最高の空中姿勢を見つけてきた。同教授は「ここまでのレベルの選手が飛行スタイルを変えるのはすごいこと。今のルールでジャンプを突き詰めている」と絶賛する。

 08年の頃は上体がやや起きて、スキー板も立っていた。14年は体が深く前傾して板もより地面と平行に近くなった。平然と「角度は10度下がっている」と話すが、それだけの変化を恐れず取り入れるところが、飛び続けられる要因の1つ。「レジェンド」と呼ばれながらも、過去の存在になることを嫌い、未来に向けて進化を続ける葛西。冬季五輪史上最多、8度目の大会は、まだ始まったばかりだ。