日本女子が前回覇者オランダとの決勝を2分53秒89の五輪新記録で制し、悲願の金メダルを獲得した。

 日本の技術が、メダリスト3人を並べたオランダの個の力を超えた。メダルなしに終わった14年ソチ五輪後、所属の垣根を越え、有望選手を集めたナショナルチームを発足。オランダ人のヨハン・デビット・コーチ(38)を招き、選手の意識を変えながら、金メダルへの技術と戦術を作り上げた。今大会のスピードスケートのメダルは過去最多の5個となり、4年前の屈辱からの完全復活を世界にアピールした。

 ぴたりとそろった6本の足が初の金メダルをたぐり寄せた。14年ソチ五輪準決勝で11秒36差の大敗を喫したオランダとの頂上決戦。1400メートルではオランダに0秒47差をつけられたが、日本の底力はここからだった。1800メートル過ぎで再逆転すると、ぐんぐんと差を広げる。最後は1秒59差をつけ、五輪新記録の2分53秒89でゴール。4年間磨き上げてきた技術は、最高の舞台でスケート大国の個の力をのみ込んだ。

 合言葉は「ワンライン」。風洞実験を繰り返し、長野エムウエーブに取り付けられた28個の天井カメラで滑りを分析。先頭と2番目の選手の距離を1メートル30センチから1メートル以内に近づけることで、空気抵抗を10%抑えた。左右のずれも45センチ以内にし、空気抵抗を極限まで抑えた隊列、無駄のない先頭交代の技術を追い求めた。

 ソチ五輪前、団体追い抜きの合宿は数カ月に1度、1~2週間程度だったが、平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)に向けては、ナショナルチームで年間300日以上生活をともにし、互いの呼吸、癖、感覚を共有してきた。夏場の徹底したフィジカル強化で個人の力もアップ。技術と体力の土台が出来上がり、今季は「打倒オランダ」を明確に掲げた。

 全員の持久力が増したことで、1回あたり0・2秒ロスする先頭交代を昨季までの4回から3回に減らす“攻めの作戦”に着手。さらに、今季W杯第4戦からは、全員が余力を残さず滑りきるため、さらに半周分(200メートル)をエース高木美が受け持ち、6周中3・5周を先頭で滑ることで、大きくタイムを伸ばした。W杯全3戦で世界記録をマークした勢いのまま、五輪記録で世界の頂点へと一気に駆け上がった。【奥山将志】