9月に引退を発表した元トップジョッキー柴田善臣氏(60)が、独自の視点でG1レースを振り返る「ヨシッ!!トミのG1ソムリエ」がスタートします。第1回は秋華賞の回顧です。 JRA・G1で9勝を挙げた名手ならではの騎手心理、レース運び、展開やトラックバイアス分析などを踏まえ、総合的にG1を回顧します。柴田善臣氏は大のワイン好き。世界のソムリエが後進育成とワイン普及に尽力しているように、“競馬界のソムリエ”として一筆を記します。
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日刊スポーツ読者の皆さま、柴田善臣です。1994年から「ヨシッ!!トミ」というコラムを始めて、先月まで約32年間も連載を続けさせてもらいました。今週からG1のレース回顧をさせてもらいますが、以前から日刊スポーツで評論を担当する坂口正大先生は調教師ならでは目線で解説されているので、僕は騎手目線で回顧できれば、と思います。
秋華賞は単勝1・3倍と断然人気のモンローウォークが強い競馬で勝ちました。勝因は(戸崎)圭太の立ち回りとペースが流れて折り合いがつけやすかったこと。この2つじゃないかな。
僕も14年の安田記念を単勝1・7倍のジャスタウェイで勝ちました。G1でそれだけ人気を集めるということは当然、一番力がある馬。走ってくれるのは馬だから、人間が舞い上がらないことが大事。全馬勝ちたいと思っているから、他からすれば圧倒的人気馬でもマークしながら走ることは簡単ではないですよ。だから僕は当時、とにかく不利を受けないように周りを確認しながら、早め早めに走りやすい状況へと誘導してあげることを意識しましたね。
圭太も人気馬を何度も勝たせてきたジョッキー。今回も自信を持って乗っていましたよね。特に1、2コーナーの入りがうまかった。折り合いをつけながら、欲しかった4、5番手が取れた。向正面で前の馬の外へ出して、左斜め後ろにいたカナルサンマルタンを少しずつ外に持っていく形にできた。その時に少し掛かりそうになったけど、1000メートル通過57秒8とペースが流れていたことで、馬とけんかにならなかったよね。
今の京都は馬場がよくて前が止まりにくい。圭太も少し流れているなと思っていたと思うけど、リズムをとにかく優先していた。前進気勢がある馬は少し速く流れた方が競馬しやすいんですよ。だから馬の邪魔をせず、信頼していることが伝わるレースでしたね。まだまだ上を目指せる人馬だと思います。
(横山)和生が乗った2着のギャラボーグも相当強いですね。和生が勝ち馬と同じ仕掛けだと相手の方が脚を使えると踏んだのか、2番手から早めに仕掛けて、後ろに脚を使わせる競馬をしましたね。レースでは初騎乗だけど、調教にまたがって大きな完歩で走る馬だと分かっていたから、その大きな馬のアクションを邪魔せず、速いペースでも積極的に運べたのだと思います。ゴール前で勝ち馬が気を抜いたのか、ギャラボーグがもうひと粘りしていたので、これからが楽しみな馬ですね。
3着ドリームコアのクリストフ(ルメール)はちょっと3コーナーから動きづらいところにいましたね。流れも速いままだったので、腹をくくって後ろから最後に脚を使って、前が止まることを祈るようなレース。それであそこまで来るのだから、やっぱり力がありますね。
今年の3歳牝馬はレベルが疑問視されていたようですけど、桜花賞馬、オークス馬が出ていない中でこの時計、レース内容ですから、レベルはかなり高いんじゃないですかね。秋華賞で頑張った馬たちは、今後もっと活躍できるんじゃないかと思いますよ。(元JRAジョッキー)

