「なんで逆方向に打ったりせなあかんの…」日韓の野球観を受け入れた京都国際

2022年夏の甲子園、京都国際を優勝候補の一角に挙げても差し支えないでしょう。センバツは、開幕直前の新型コロナ集団感染で無念の辞退。代役の近江が準優勝したことを鑑みれば、その実力は明らかです。韓国からの留学生に日本式を押しつけず、辛抱強くブレンド。時間をかけて醸造したたくましさで、関西屈指の強豪校に成長しました。大会第1日の第3試合。仕切り直しの挑戦が始まります。

高校野球

◆京都国際1947年(昭22)に京都朝鮮中として開設。58年に学校法人京都韓国学園に。63年、高等部が開校。04年に、日本の学校教育法第1条の認可を受ける。日韓両国から中高一貫校として認められ、京都国際中学高等学校に。全校生徒138人(女子66人)。野球部は99年創部、部員62人。甲子園は夏2度目、春は1度。今春も選出されたが、大会前に辞退。京都市東山区今熊野本多山町1。朴慶洙校長。

甲子園出場を決め、選手をねぎらう小牧監督。優しさと厳しさを同居させ、チームをまとめていく=2022年7月27日

甲子園出場を決め、選手をねぎらう小牧監督。優しさと厳しさを同居させ、チームをまとめていく=2022年7月27日

◆小牧憲継(こまき・のりつぐ))1983年(昭58)7月17日、京都府生まれ。京都成章では二塁手としてプレー。関大から06年に滋賀銀行に入行。同年から京都国際外部コーチで、07年から同校の社会科教諭。08年、同校監督に就任した。167センチ、67キロ。現役時代は右投げ左打ち。既婚。甲子園には3度出場し、6試合で4勝2敗。

?センバツ辞退 不振から浮上

不振のナインを救ったのは「甲子園」だった。

6月上旬、京都国際は近江(滋賀)と練習試合に臨んだ。5回までエース山田陽翔投手(3年)に歯が立たず、4点リードされた。降板後の6回に3点奪って反撃したが、1歩及ばず敗れた。

監督の小牧憲継(39)は選手に言った。

「お前ら、見たか。これが実際に甲子園を経験したチームと、経験していないチームの差やぞ」

22年の春、センバツ優勝候補だった京都国際はどん底に落ちてしまった。3月の開幕前日、新型コロナウイルスの集団感染で、急転の出場辞退。代替出場の近江が準優勝した。

府内で敵なしだった京都国際はその後、春季京都府大会を準々決勝で敗退し、練習試合も大敗…気鋭の強豪校は、もがいていた。

新型コロナ集団感染による選抜辞退を報じた、2022年3月18日の日刊スポーツ大阪本社1面

新型コロナ集団感染による選抜辞退を報じた、2022年3月18日の日刊スポーツ大阪本社1面

両校は、もともと、似たチームカラーだった。山田と同じように、京都国際も森下瑠大(3年)がエースで主砲。ドラフト候補が力強く引っ張る戦い方だ。

だが、センバツを境に残酷なコントラストを描いた。小牧は気づいたことがあった。

「近江さんは、ウチの子よりも落ち着き払って、秋の近畿大会からすごく成長していた。やっぱり、あの舞台を経験している。すごく自信に満ちあふれていた」

監督の鋭い指摘に、これまで空回りしていた選手の目の色も変わった。「このままでは終われない。あれだけ差をつけられて悔しい。もう1回、何が何でも甲子園に戻るぞ」と言い合った。因縁の相手に敗れ、やっと気持ちが1つになった。

?前身は京都韓国学園

京都国際は、昨年から3季連続で甲子園出場を決めていた。昨夏は4強に躍進。「新興勢力」とみる向きもあるが、実情は違う。

08年に監督に就任した小牧が、選手と接しながら指導者としての価値観、野球観を育み、地道にチームを作り上げてきた。

同校の前身は京都韓国学園で、野球部員にも隣国からの留学生がいた。日本と韓国。最初はカルチャーショックの連続だったという。あるとき、声を荒らげる生徒がいた。

「カーブを放るなんて、ひきょうだ!」

1979生まれ。京都府出身。2003年入社で阪神を中心にカバー。
広島担当、プロ野球遊軍をへて、2021年からアマチュア野球担当。
無類の温泉好きで原点は長野・昼神温泉郷。