転換点はダイエーのスパイ行為疑惑 職員がサイン解読→バイトのメガホン→打者に伝達
連載第3回は、日本球界におけるサイン盗みの歴史を振り返ります。ひと昔前、プロ野球界で高等技術とさえ考えられていた行為が、ある出来事をきっかけに一気に禁止へと傾斜していきます。(2019年5月10日掲載)
その他野球
★乱数表の使用禁止
日本球界における「サイン盗み」の歴史を振り返りたい。その前に、サイン盗みの定義を確認しよう。
「走者や一、三塁コーチ、ベンチにいるメンバーが、相手捕手の出すサインを解読し、味方打者に伝える行為」
似て非なるものに「スパイ行為」がある。中継映像や双眼鏡などを用い捕手のサインを解読。何らかの手段で打者に伝える行為だ。グラウンド内の人間(選手、コーチ)が行うサイン盗みに対し、スパイ行為はグラウンド外の人間が行う。実は、ある時期までスパイ行為はダメだがサイン盗みはOK、むしろ高等技術とみなされてきた。
プロ野球でスパイ行為禁止が明文化されたきっかけは、1984年(昭59)5月25日のこと。
当時の下田コミッショナーが、バッテリー間のサイン交換で乱数表を使うことを禁止するよう提案した。試合展開が、あまりにも間延びしていたからだ。12球団が了承し、同年6月8日から実施された。
乱数表はスパイ行為への防御策だった。決定を受け、パ・リーグは同年6月、セ・リーグは92年3月、機器を使って情報を不正に入手しないよう申し合わせた。この時点で、まだサイン盗みは禁止されていない。
★モニター解読→無線機→メガホンで伝達
大転換は98年オフ。ダイエー(現ソフトバンク)のスパイ行為疑惑だ。西日本新聞が12月2日の朝刊で報道。
97年5月ごろから98年6月まで、本拠地福岡ドームでの試合で、球団職員が球場内モニターを見て相手バッテリーのサインを解読。無線機で外野席のアルバイト学生に球種を伝え、学生がメガホンを立てるなどして打席の選手に合図を送っていた、というものだ。
関与が疑われた3選手は完全否定。ダイエーが設置した調査委員会の報告は不十分として、パは特別調査委員会を発足。元検事総長の弁護士が調査に乗り出した。
子どもの頃、平和台球場で見た情景がプロ野球観戦の原点。大学卒業後は外務省に入り、旧ユーゴスラビアのセルビアやクロアチアの大使館に勤務したが、野球と縁遠い東欧で暮らしたことで、逆に野球熱が再燃。30歳を前に退職し、2006年6月、日刊スポーツ入社。
その夏、斎藤佑樹の早実を担当。いきなり甲子園優勝に立ち会うも、筆力、取材力及ばず優勝原稿を書かせてもらえなかった。それがバネになったわけではないが、2013年楽天日本一の原稿を書けたのは幸せだった。
野球一筋に、横浜、巨人、楽天、ロッテ、西武、アマチュアの担当を歴任。現在は侍ジャパンを担当しており、3月のWBCでは米・マイアミで世界一を見届けた。
好きなプロ野球選手は山本和範(カズ山本)。
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