「センバツが決まったら、大きなことを言え」「5割、バックスクリーンにホームラン」/岡本和真あすなろの記〈2〉

巨人の岡本和真内野手(26)が、9月24日の中日戦(バンテリンドーム)で5年連続30本塁打をクリアしました。巨人では19年連続の王貞治、7年連続の松井秀喜に続く3人目。球団の右打者では初の記録です。プロ入り前の岡本を見守ってきたのが、智弁学園(奈良)の小坂将商監督(45)。中学1年の原石に一目ぼれし「こういう選手を育ててみたい」という一念が通じ、「智弁学園・岡本」は誕生しました。人並み外れた技術と体格を備えながら、人より目立つことを何より苦手とした少年が、老舗球団の看板打者に成長していく。胎動を追いました。(文中敬称略)

高校野球

「体重が全部、バットの芯に伝わってる」

2012年の高校球界は、大阪桐蔭が席巻した。

藤浪晋太郎(阪神)―森友哉(西武)のバッテリーを軸に、第84回選抜大会を制覇。その春、岡本和真(巨人)は智弁学園(奈良)に入学した。

「橿原磯城リトルシニア」のグラウンドで、中学1年の岡本を見たときから、監督の小坂将商が別格と認めた。

智弁学園を志望してくれないものか、と思い続けた逸材は、奈良・五條市のグラウンドで青山大紀(元オリックス)ら上級生に交じっても逸材ぶりを発揮した。

「岡本のバッティングを見ていて、ヘッドスピードが速いって思ったことはなかったです。ただボールが(バットに)くっついている時間が長いなあと思った。体重を全部うまいことそのまま乗せるっていうか、体重が全部バットの芯に伝わってるなと思いました」

「当時、体重90キロくらいじゃないですか。そら、打球は飛ぶわなと思いました。無駄がない。体重をうまいことバットに伝えてかぶせるし、スピンもかかる。体重がうまいことバットに伝わるっていうのは、余計な所に力が入っていないから。軽く振っていても、飛んでいきました」

逆方向に一直線 左打ちスラッガーの打球

小坂にすれば、期待通りの新入生だった。この打撃は、教えてできるものではない。天から授けられたものだと実感した。

「バットとボールがくっついている。まさにそういう感じです。長い時間、くっついているような感じですね。その間にスピンかけるとか。ぼくらもよく手首の使い方を選手に言っていましたが、岡本の技術は天性でした」

入学直後の徳島遠征で、そのすごさを目の当たりにした。レギュラーメンバーとともに起用した練習試合で、15歳の岡本は逆方向に果てしなく打球を飛ばした。

「だいたい曲がるんです。逆方向に打ったら。でも岡本の打球は、そのままずーっと飛んでいきました。いったやろーって言ったら、そのまま、いきました。あんなの教えてもできるものじゃないと実感しました」

高校3年時の連続写真。基本がほぼ完成されており、プロ入り後も木への移行がスムーズだった。右肘の入れ方、ボールとの距離をキープするステイ・バックのバランスが秀逸=2014年6月21日

高校3年時の連続写真。基本がほぼ完成されており、プロ入り後も木への移行がスムーズだった。右肘の入れ方、ボールとの距離をキープするステイ・バックのバランスが秀逸=2014年6月21日

左打席で打ったのか、と思うような打球を飛ばした。

古代の王国トロイを発見したシュリーマンにあこがれ、考古学者を目指して西洋史学科に入学するも、発掘現場の過酷な環境に耐えられないと自主判断し、早々と断念。
似ても似つかない仕事に就き、複数のプロ野球球団、アマ野球、宝塚歌劇団、映画などを担当。
トロイの 木馬発見! とまではいかなくても、いくつかの後世に残したい出来事に出会いました。それらを記事として書き残すことで、のちの人々が知ってくれたらありがたいな、と思う毎日です。