朝風呂、酒、真っ赤なパンツ、あみだババァ…くじに命運託す 日刊ドラフト全史(5)
日刊スポーツは1946年(昭21)3月6日に第1号を発刊してから、これまで約2万8000号もの新聞を発行しています。昭和、平成、そして令和と、それぞれの時代を数多くの記事や写真、そして見出しで報じてきました。日刊スポーツプレミアムでは「日刊スポーツ28000号の旅 ~新聞78年分全部読んでみた~」と題し、日刊スポーツが報じてきた名場面を、ベテラン記者の解説とともにリバイバルします。懐かしい時代、できごとを振り返りながら、あらためてスポーツの素晴らしさやスターの魅力を見つけ出していきましょう。
7回に渡って送るドラフト特集の第5回は、2008年(平20)から2023年(令4)を振り返ります。希望入団枠が廃止され、1位指名が重複した場合は抽選という方式に統一され、クジを引く監督らは験担ぎが恒例となりました。(内容は当時の報道に基づいています。紙面は東京本社最終版)
プロ野球
希望枠廃止後はすべて1面
1993年(平5)から14年間、形や名前を変えながら存在した逆指名制度は、2007年(平19)から姿を消した。
高校生と大学・社会人での分離開催も、2008年(平20)から再び統一された。全球団が1位選手を一斉に指名し、同一選手が重複した場合は抽選で決める。2位以降はウエーバー(下位球団からの順番)と逆ウエーバーを交互に繰り返す。
セ、パのどちらが優先されるかの規定は何度も変更された。オールスターの勝ち越しや、交流戦の勝ち越しなどを用いた時期もあるが、2019年からは交互になっている。2019年がセ、20年がパである。
シンプルな制度に戻り、日刊スポーツでも1面での報道が続いていく。
◆2008年(平20)10月31日付紙面
「原監督 当たり年 大田ゲット」
巨人、ソフトバンクが競合した大田泰示(東海大相模)は、高校の先輩である巨人原辰徳監督が当たりくじを引いた。記事によると、ゲン担ぎがすごい。
試合だけでなく、抽選に挑むまでの采配も万全だった。朝風呂で身を清め、つめを切る。自宅の神棚に手を合わせてお願いもした。さらに知人からもらったという勝負事に御利益があるといわれる茶色の石をポケットに忍ばせ「いつも右手で引いているから今年は左手で引く」(略)
また、ロッテが2位指名で、巨人を熱望していた長野久義(ホンダ)を指名した。長野は日大時代の2006年、日本ハムから4巡目指名を受けたが、拒否して社会人に進んでいた。結果的にこの年もプロ入りは見送る。
楽天が5位で、楠城徹編成部長補佐の息子、祐介(パナソニック)を指名。ロッテは育成枠で、元巨人角盈男投手の息子、晃多(東海大相模)を指名した。
◆2009年(平21)10月30日付紙面
「西武雄星 工藤へ!!松坂へ!!」
菊池雄星(花巻東)の評価が高く、西武、阪神、ヤクルト、楽天、中日、日本ハムの6球団が重複した。当たりくじは最初に引いた西武渡辺久信監督が手にした。記事を見よう。
半透明な抽選箱に、震える右手を突っ込んだ。まさぐって重なった封筒の中から1通を握った。「くじを交ぜちゃおうとも思ったけど、逃げていく気がした。引いたのは真ん中くらい。一番上でも、一番下でもないと思った」。
(中略)今回は、自宅で見つけた紫色のボールペンを持参し「花巻東のスクールカラーだから」と、お守り代わりにポケットにしのばせた。前夜は球団幹部やスカウト陣と都内ホテルで会食。「彼をはぐくんだ地元で作った清酒を飲んで身を清めましょう」と、岩手の地酒「南部美人」で乾杯した。店に在庫がなく、従業員が購入のために走り回って探したもの。験かつぎの効果てきめんだった。
前年の原監督と同じように、獲得への執念を感じるエピソードである。単なる験かつぎ、神頼みと言えばそれまでだが、選手にとっては、これ以上のラブコールはないだろう。
この年から一般観客にも公開されるようになった。
今年のドラフト会議は史上初めて、抽選で選ばれた観客1000人を会場に招待して行われた。冒頭に加藤良三コミッショナーは「未来のスター選手の誕生を会場のみなさんといっしょに祝福できれば」とあいさつ。(中略)下田邦夫事務局長は「王さんが『今までなぜやらなかったのか分からない』と言っていたが、それを実感した」と、手応え。
なお、コロナ禍では一般公開は行われなかった。
本文残り79% (5669文字/7168文字)

1969年(昭44)生まれ。横浜出身。
93年に入社し、プロ野球の横浜(現DeNA)、巨人、大リーグ、NPBなどを担当した。著書「松井秀喜 メジャーにかがやく55番」「イップスは治る!」「イップスの乗り越え方」(企画構成)。
日本イップス協会認定トレーナー、日本スポーツマンシップ協会認定コーチ、スポーツ医学検定2級。流通経大の「ジャーナリスト講座」で学生の指導もしている。
-
高校野球【金足農連載〈19〉】イラついた日、父との安打、後輩への期待…3年生、最後の思い
【金足農連載〈19〉】イラついた日、父との安打、後輩への期待…3年生、最後の思い 金足農(秋田)は夏の甲子園1回戦で西日…
飯島智則
-
高校野球【金足農連載〈18〉】初戦は西日本短大付 吉田大輝の調整法と135キロの勝負球
【金足農連載〈18〉】初戦は西日本短大付 吉田大輝の調整法と135キロの勝負球 6年ぶり7度目の甲子園出場となる金足農(…
飯島智則
-
高校野球【スポーツと眼〈5〉】ビジョントレがライバルに差をつける手段に
【スポーツと眼〈5〉】ビジョントレがライバルに差をつける手段に 日本スポーツビジョン協会で、「目の能力」を測定しました。…
飯島智則
-
高校野球【金足農連載〈17 〉】1点に泣くな、1点で笑え!再建に挑んだ6年間を振り返る
【金足農連載〈17 〉】1点に泣くな、1点で笑え!再建に挑んだ6年間を振り返る 金足農(秋田)が6年ぶりの甲子園出場を決…
飯島智則
-
高校野球【金足農連載〈16〉】吉田大輝の相方が先制打&好リードで8強 次戦は継投が鍵?
【金足農連載〈16〉】吉田大輝の相方が先制打&好リードで8強 次戦は継投が鍵? 金足農(秋田)は3回戦で大館桂桜に4―0…
飯島智則
-
高校野球【スポーツと眼〈4〉】0・1秒で数字をいくつ覚えられるか?〝目〟の能力を測る
【スポーツと眼〈4〉】0・1秒で数字をいくつ覚えられるか?〝目〟の能力を測る スポーツビジョントレーニングをする前に「目…
飯島智則
-
高校野球【金足農連載〈15〉】明桜の分まで甲子園へ ライバル対決制し決意も新たに
【金足農連載〈15〉】明桜の分まで甲子園へ ライバル対決制し決意も新たに いよいよ夏の大会が始まりました。金足農(秋田)…
飯島智則
-
高校野球【金足農連載〈14〉】準Vチームの強さは「目立ってやろう」と「考える力」だった
【金足農連載〈14〉】準Vチームの強さは「目立ってやろう」と「考える力」だった 日刊スポーツの歴代担当記者が、金足農の思…
飯島智則
-
高校野球【金足農連載〈13〉】実るほど頭をたれる稲穂であり、摘まれても生える雑草だった
【金足農連載〈13〉】実るほど頭をたれる稲穂であり、摘まれても生える雑草だった 日刊スポーツの歴代担当記者が、金足農の思…
飯島智則
-
高校野球【金足農連載〈12〉】輝星先輩、やりました!「甲子園で会いたい」のエールに応えた
【金足農連載〈12〉】輝星先輩、やりました!「甲子園で会いたい」のエールに応えた 秋田代表として甲子園出場を決めた金足農…
飯島智則
-
高校野球【スポーツと眼〈3〉】イチロー氏も興味の都立新宿 得意分野の脳で体力、技術を補う
【スポーツと眼〈3〉】イチロー氏も興味の都立新宿 得意分野の脳で体力、技術を補う 都立新宿高もビジョントレーニングに取り…
飯島智則
-
高校野球【金足農連載〈11〉】乗り越える強さ、ハングリーな心…大切なことは今も変わらない
【金足農連載〈11〉】乗り越える強さ、ハングリーな心…大切なことは今も変わらない 中学生の硬式野球クラブ、ネオグリッター…
飯島智則
-
高校野球【スポーツと眼〈2〉】慶応森林監督「未開発の分野だからこそ先行する意義がある」
【スポーツと眼〈2〉】慶応森林監督「未開発の分野だからこそ先行する意義がある」 昨夏の甲子園を制した慶応高(神奈川)が、…
飯島智則
-
高校野球【金足農連載〈10〉】スポーツ栄養士と歩む食育は〝チーム金農〟学校産の卵も食べた
【金足農連載〈10〉】スポーツ栄養士と歩む食育は〝チーム金農〟学校産の卵も食べた 金足農(秋田)は昨年から本格的な食育に…
飯島智則
-
その他エンタメ大一番で選択「等身大」KDがCS連覇! Legit1点に泣く/CSリポート
大一番で選択「等身大」KDがCS連覇! Legit1点に泣く/CSリポート <D.LEAGUE 23-24SEASON …
久我悟、飯島智則
-
高校野球【スポーツと眼〈1〉】連覇の秘策? 甲子園Vの慶応高が目を鍛えている
【スポーツと眼〈1〉】連覇の秘策? 甲子園Vの慶応高が目を鍛えている 人間が五感から得る情報の8~9割は視覚によるといい…
飯島智則
-
高校野球【金足農連載〈9〉】兄を超える!輝星と大輝 吉田兄弟の共通点と違い
【金足農連載〈9〉】兄を超える!輝星と大輝 吉田兄弟の共通点と違い 金足農のエース吉田大輝投手(2年)は、オリックス吉田…
飯島智則