【河辺愛菜〈上〉】スケートとの出合い 理想のスケーターを目指して
あけましておめでとうございます。
日刊スポーツ・プレミアムでは、毎週月曜日にフィギュアスケーターのルーツや支える人の思いに迫る「氷現者」をお届けしています。
元日から始まるシリーズ第23弾は、10月に節目の二十歳となる河辺愛菜(19=中京大)を取り上げます。
京都両洋高2年で経験した2022年北京五輪(オリンピック)。突っ走ってきたスケート人生を思い返し、将来の理想とするスケーター像を語りました。
3回連載の第1回では自身の原点となる、地元愛知での日々を振り返ります。(敬称略)
フィギュア
河辺愛菜(かわべ・まな)2004年(平16)10月31日、名古屋市生まれ。5歳で競技を始め、中学2年時に関西へ拠点を移す。浜田美栄コーチに師事してトリプルアクセル(3回転半)を習得。19年全日本ジュニア選手権優勝、20年ユース五輪4位。21年はGPシリーズNHK杯2位となり、全日本選手権3位で22年北京五輪と世界選手権に出場。同年春から名古屋に拠点を戻し、樋口美穂子コーチに師事。22年GPフィンランド大会3位、23年は全日本選手権13位。嵐の櫻井翔のファン。趣味はダンス。京都両洋高から愛知・中京大中京高に転校し、中京大在学中。156センチ。
ジャンプか、表現か…
全日本選手権の開幕が、1週間後に迫っていた。
2023年12月14日。師走にしては暖かく感じる午後3時過ぎ、授業を終えた河辺が、練習拠点の中京大アイスアリーナ「オーロラリンク」に姿を見せた。
大学に入学し、半年が過ぎた。氷の上での真剣な表情とは異なり、リンクの入り口を入って右横の椅子に腰かけて進んだ104分の取材中は、穏やかな笑みを浮かべることが多かった。
午後5時に差しかかると、いつの間にか、ガラス越しの外が暗くなっていた。
取材の最後に「将来、引退する時に、どんなスケーターになっていたいですか?」と尋ねた。
河辺はシンプルな答えを持っていた。
「『もっと見たい!』と思ってもらえる選手になりたいです。引退する時には『これは私にしかできない』というのを見つけ、ファンの方にも思ってもらえる選手になっていたいです」
少し前に、印象的なやりとりがあったという。
11月中旬に北欧の地エスポーで行われた、グランプリ(GP)シリーズのフィンランド大会。帰国すると、同行がかなわなかったメインコーチの樋口美穂子に声をかけられた。
「ショートは失敗しちゃったけれど、表情、滑りを含めて、プログラム全体は良かったよ。でもフリーは、ジャンプしか考えていなかったでしょう」
心の中で思わず「伝わるんだな…」と発していた。自らの感想と同じだった。
ショートプログラム(SP)はジャンプ2本の転倒で12位発進。それでも1つ1つの所作に込めた感情が、海の向こうで画面を見ている師へと伝わっていた。
「ショートは失敗した時に頭が真っ白だったのですが、演技しながら曲に乗れていたんです。フリーは巻き返ししか頭になくて『とにかく失敗したらダメだ!』としか、考えていませんでした。やりながら表現も頑張ってはいたのですが、後から考えると、ショートの方が表現に目が向いていました」
シニア4季目の19歳。少しずつスケートに対する向き合い方が変わり始めた。
「ノービスやジュニアの頃は『結局、技術ができたら…』と思っていました」
とはいえ、その過程もかけがえのない時間だった。
スケートとの出合い
2004年10月31日、スケートが盛んな名古屋市で生まれた。
翌11月1日には新紙幣が発行され、5千円札が新渡戸稲造から樋口一葉に、1000円札が夏目漱石から野口英世に変わった。
幼稚園に入ると、父と自宅の斜め前の公園で雲梯(うんてい)をして遊んだ。両親はピアノや水泳、体操にも取り組ませてくれた。スケートと出合うことになったのは、その頃だった。
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松本航Wataru Matsumoto
大学までラグビー部に所属。2013年10月に日刊スポーツ大阪本社へ入社。
プロ野球の阪神を2シーズン担当し、2015年11月から西日本の五輪競技やラグビーを担当。
2018年平昌冬季五輪(フィギュアスケートとショートトラック)、19年ラグビーW杯日本大会、21年東京五輪(マラソンなど札幌開催競技)を取材。
21年11月に東京本社へ異動し、フィギュアスケート、ラグビー、卓球、水泳などを担当。22年北京冬季五輪(フィギュアスケートやショートトラック)、23年ラグビーW杯フランス大会を取材。
身長は185センチ、体重は大学時代に届かなかった〝100キロの壁〟を突破。体形は激変したが、体脂肪率は計らないスタンス。
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