【バレー連載〈1〉】日本代表4人を育てた熱血監督~「辞めたい」宮部藍梨を輝かせた
全日本中学校バレーボール選手権大会の女子で、この夏に史上最多を更新する5連覇を狙う学校がある。大阪の金蘭会中学。5月15日に初戦を迎えるネーションズリーグの女子日本代表にOG4人が登録されている。才能ある選手を輩出する名門中学の育成法に迫る。
バレーボール
【バレー金蘭会中学連載〈1〉】
バレー金蘭会中学連載〈2〉は20日(月)掲載
5月27日から高橋兄弟「塁&藍の物語」がスタート!
日本を背負う選手
宮部姉妹,林,中川
〈プロローグ〉
当初は20分ほどを予定していたインタビューは、すぐに1時間を超えた。
校舎5階にある体育館の片隅に置かれたテーブル。 監督の佐藤芳子は古いノートとパソコンを広げ、チームの理念を丁寧に教えてくれた。
目の前では選手たちが練習をしている。1時間半ほど過ぎた頃、ふと立ち上がった。
「自分たちで考えて、こうやって動く。中学生のチームでは少ないと思います」
仲間が動画を撮影し、それを見ながら、また同じ練習を繰り返す。
「あれをやり出したのはここ2~3年です。俯瞰(ふかん)することで、上達する速度が上がるんです。自分の強みが何なのかを考え、過去の自分と見比べてみる。映像はよく使っているんです」
頭にタオルを乗せてレシーブする。それは、重心移動と目線を固定することで、ブレない上半身にする意味があるという。
パリ五輪を控える今年のバレーボール女子日本代表の登録メンバーに林琴奈、宮部藍梨(あいり)と愛芽世(あめぜ)姉妹、セッターの中川つかさが入った。
4人は中学、高校と金蘭会で育っている。
今年の夏、金蘭会中は全日本中学選手権で5連覇の偉業に挑む。
多くの日本代表を育て、他を寄せ付けないほどに強い。
その指導法を尋ねると、意外な言葉が返ってきた。
「林の時はスパルタでした。練習がきつくて長い。その頃は、それが正解だと思い込んでいました。時代の変化と、娘を出産した経験から指導に対する考え方が変わりました。
生徒にバレーしかやらせてこなかった。娘ができて、四季や日常の変化を感じることの大切さを考えるようになったんです。
愛芽世が来た頃には少し違うやり方になっていたと思います」
今は練習時間を極力減らしている。
林が在籍していた頃は年間508セットをこなした練習試合は、最近は半分以下の200セットほどになった。
「私が育てた感覚は全くないんです。あの子たちが、自分たちでそうなっていっただけだから」
決して弱音を吐かなかった林琴奈。
学校を休むことが多く、それでも必死に育てたのが宮部藍梨だった。
練習を見つめながら、そんな教え子たちの中学時代を思い出していた。
2024年度のチームのテーマとして掲げているのは「TRY HARD with Smile」
これは、生徒とともに成長し、今なお日本一を目指し続けている1人の指導者の物語である。
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茨城県日立市生まれ。京都産業大から2000年大阪本社に入社。
3年間の整理部(内勤)生活を経て2003年にプロ野球阪神タイガース担当。記者1年目で星野阪神の18年ぶりリーグ制覇の現場に居合わせた。
2004年からサッカーとラグビーを担当。サッカーの日本代表担当として本田圭佑、香川真司、大久保嘉人らを長く追いかけ、W杯は2010年南アフリカ大会、2014年ブラジル大会、ラグビーW杯はカーワンジャパンの2011年ニュージーランド大会を現地で取材。2017年からゴルフ担当で渋野日向子、河本結と力(りき)の姉弟はアマチュアの頃から取材した。2019年末から報道部デスク。
大久保嘉人氏の自伝「情熱を貫く」(朝日新聞出版)を編集協力、著書に「伏見工業伝説」(文芸春秋)がある。