【春高バレー連載〈2〉】就実 監督の失踪…2年分の思い背負って歩む日本一の道「勝たせたい」

2023年1月、春高バレーの女子で3連覇を目指した就実高校は会場に入ることなく岡山に戻った。「陰性」が証明されても、大会側は棄権を覆さなかった。わが子のように愛情を注ぎ、生徒を育ててきた監督の西畑美希はそれから1カ月近く姿を消した。今大会は2年分の思いを込めた舞台になる。春高バレー(1月4日開幕)連載の第2回。これは、必ずや日本一に返り咲くであろうチームの涙の物語…。(敬称略)

バレーボール

2023年1月5日、就実―新潟中央の試合が行われるはずだった東京体育館のAコート。就実は不戦敗とされ、人気がなく静かな空間が流れていた

2023年1月5日、就実―新潟中央の試合が行われるはずだった東京体育館のAコート。就実は不戦敗とされ、人気がなく静かな空間が流れていた

監督がいない1カ月

岡山に戻った就実高校女子バレーボール部は、休むことなく翌日から新チームの練習が始まった。

そこに監督の西畑はいなかった。

生徒を春高の舞台に立たせてやれなかったことが、重くのしかかっていた。

それは1カ月ほど続いたという。

「いろんなことを考えてしまって…。

体調不良もあって、休ませてもらったんですよ。

とてもじゃないけど、体育館に立てるような状況ではなかったです」

すぐに始まった新人戦は中学のコーチが指揮を執った。

なぜ、そこまで自分を追い詰めてしまったのか。

1年が過ぎた今、体育館の片隅で聞いたインタビューは、1時間近くが過ぎようとしていた。

そろそろ生徒たちがウオーミングアップを終えようとしていた頃、最後に明かしたチームへの思いがあった。

春高で見たい!就実のこの笑顔!

 西畑監督(左下)と就実の部員。彼女たちには負けられない理由がある

西畑監督(左下)と就実の部員。彼女たちには負けられない理由がある

【就実高校メンバー】

井上凜香(3年=就実中)、河本菜々子(3年=就実中)、高橋凪(2年=就実中)、福村心優美(2年=栄進中)、押川優衣(2年=丸亀東中)、牛田音羽(1年=丹陽中)、比留間美晴(1年=就実中)、簗瀬咲桜(2年=就実中)、岡崎杏(3年=就実中)、川村彩乃(3年=桑田中)、大森美羽(2年=就実中)、石田恵(1年大田二中)、仙波こころ(1年=小野中)、伊藤晴香(2年=河北中)、二宗心音(3年=就実中)、小林柚葉(3年=香長中)、小嶋杏佳(2年=別府中)、水井琥珀(3年=一ツ橋中)、高島朱理(3年=鴨方中)

監督=西畑美希

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編集委員

益子浩一Koichi Mashiko

Ibaraki

茨城県日立市生まれ。京都産業大から2000年大阪本社に入社。
3年間の整理部(内勤)生活を経て2003年にプロ野球阪神タイガース担当。記者1年目で星野阪神の18年ぶりリーグ制覇の現場に居合わせた。
2004年からサッカーとラグビーを担当。サッカーの日本代表担当として本田圭佑、香川真司、大久保嘉人らを長く追いかけ、W杯は2010年南アフリカ大会、2014年ブラジル大会、ラグビーW杯はカーワンジャパンの2011年ニュージーランド大会を現地で取材。2017年からゴルフ担当で渋野日向子、河本結と力(りき)の姉弟はアマチュアの頃から取材した。2019年末から報道部デスク。
大久保嘉人氏の自伝「情熱を貫く」(朝日新聞出版)を編集協力、著書に「伏見工業伝説」(文芸春秋)がある。