【春高バレー連載〈1〉】就実コロナ禍で奪われた3連覇、1年前の真実…PCR検査は陰性だった

1年前、彼女たちは体育館の外にいた。もうすぐ大会の初戦が始まろうとしていた。2023年1月、バレーボールの高校選手権大会(春高バレー)女子で3連覇を目指した岡山の就実高校はまさかの棄権。コロナ禍に振り回され、会場に入ることなく大会を去った不運のチームの「今」を描く。春高バレー(1月4日開幕)連載の第1回。大舞台に立てなかった卒業生の思いも背負い、日本一への道のりが幕を開ける。(敬称略)

バレーボール

2023年3月、金蘭会高校と神戸でエキシビジョンマッチが実現した際に撮影。題字のサムネイルも春高の舞台に立つことができなかった1年前のメンバー。金蘭会との試合の時に撮影した最後の集合写真(学校提供)

2023年3月、金蘭会高校と神戸でエキシビジョンマッチが実現した際に撮影。題字のサムネイルも春高の舞台に立つことができなかった1年前のメンバー。金蘭会との試合の時に撮影した最後の集合写真(学校提供)

~3連覇を目指し努力を重ねてきた選手たち~

【就実高校・2022年度の3年生メンバー】

 岩本沙希、高濱日菜穂、光森彩未、岡田愛菜、田中結姫、川田萌寧、安倍美咲、大沢京香、森岡春日、椛島結菜

今、明かされる真相

就実高校を訪ねたのは、2023年12月のクリスマス前だった。

体育館に入ると、片隅にあった古い電気ストーブを出してスイッチを入れてくれた。

「ここは、寒くなるんですよ」

そう言って、監督の西畑美希は辺りを見渡した。

そろそろ部員が集まってくる時間のようだ。

岡山に小雨が降った日。

練習前に時間をもらったインタビューは、すぐに予定の20分を過ぎた。

新聞に載っていた「就実 春高3連覇コロナで絶たれる」の記事。

あれから、もうすぐ1年がたとうとしていた。

あの日、チームに何が起きていたのか。

どうしても聞きたかった。

どんな時間を過ごし、どんな思いで再び春高の舞台に向かおうとしているのか。

取材は長引いた。

2023年12月中旬、選手にボールを打つ西畑監督。集中力を研ぎ澄ませながら練習は続いた

2023年12月中旬、選手にボールを打つ西畑監督。集中力を研ぎ澄ませながら練習は続いた

2023年1月6日付の日刊スポーツ

2023年1月6日付の日刊スポーツ

本文残り82% (3426文字/4170文字)

編集委員

益子浩一Koichi Mashiko

Ibaraki

茨城県日立市生まれ。京都産業大から2000年大阪本社に入社。
3年間の整理部(内勤)生活を経て2003年にプロ野球阪神タイガース担当。記者1年目で星野阪神の18年ぶりリーグ制覇の現場に居合わせた。
2004年からサッカーとラグビーを担当。サッカーの日本代表担当として本田圭佑、香川真司、大久保嘉人らを長く追いかけ、W杯は2010年南アフリカ大会、2014年ブラジル大会、ラグビーW杯はカーワンジャパンの2011年ニュージーランド大会を現地で取材。2017年からゴルフ担当で渋野日向子、河本結と力(りき)の姉弟はアマチュアの頃から取材した。2019年末から報道部デスク。
大久保嘉人氏の自伝「情熱を貫く」(朝日新聞出版)を編集協力、著書に「伏見工業伝説」(文芸春秋)がある。