【ヤマコウの時は来た!】

 初日特選は浅井康太が深谷知広を差して1着。先行させたら深谷は強い。今後、いかに先行できる展開に持っていけるかが課題だ。

 そして、いろんな展開に対応できるのが2日目特選10Rの村上義弘。先行から番手競りまですべてこなす、理想の選手像だ。高松G3決勝。先行はできなかったが、深谷との先行争い、番手の浅井との競り合いなど、表現はおかしいが、見る者すべてが納得できる負け方であった。

 村上が、他の選手から尊敬されていることを表すエピソードがある。それは前回静岡G3の優秀。阿竹智史が、竹内雄作や村上の後ろに行けるメンバー構成だったが、阿竹は村上を選択。脚力だけを比べると、現状竹内が上だ。それでも村上を選ぶ理由は、彼の闘志を感じたいという精神的な部分だ。任された村上も、意気に感じてレースに挑んだ。

 村上はダービーのことを「日本選手権」と言う。それほどこの大会に敬意を表している。自身も3回の優勝を経験しグランプリも取った。どこを目標に置いていいか分からない中、今は競輪道を追求しているようにしか見えない。そこには、勝ち方や負け方にこだわる武士の姿が浮かぶ。

 深谷との真っ向勝負の次は、新田祐大が待っている。先頭を走る時の村上は、強い選手を後ろに置くレースを絶対する。これが競輪の走り方だ、と若い選手に身をもって教えているようにしか私には見えない。日本選手権4度目Vへ向けて幸先の良いスタートを期待している。(日刊スポーツ評論家・山口幸二)