福岡はJ1自動昇格を逃した。岐阜を下したが、勝ち点で並んでいた2位磐田も勝ったため、得失点差わずか4差で及ばなかった。それでも井原正巳監督(48)が就任し、昨季16位のどん底からはい上がったチームはクラブタイ記録の8連勝でフィニッシュと勢い十分。フランスW杯をともに戦った磐田名波浩監督(42)に先を越されたが、29日からのJ1昇格プレーオフ(PO)で5季ぶりの昇格を目指す。

 岐阜の空に福岡の歓喜はこだましなかった。試合終了の瞬間、井原監督はコーチらと淡々と握手を交わし、選手も派手な喜びはなかった。それでも井原監督は「3位で終わり、十分J1に昇格するに値する力がある。自信を持ってPOに行きたい」と静かに闘志を燃やした。岐阜に快勝したものの磐田の勝ちでJ1自動昇格はなし。だがクラブタイ記録の8連勝で昇格PO準決勝に弾みをつけた。

 磐田と勝ち点で並び、得失点差で3位で迎えた最終戦。磐田を逆転するため、DF中村北は「大量点を狙いながらやっていた」と、序盤からハードワークで飛ばした。前半13分、「勝つことだけを考えていた」という主将のMF城後が、MF酒井の左からの折り返しを頭で合わせて先制。チームに勢いを与えた。

 後半15分に5試合ぶりの失点で追いつかれた。だがリーグ終盤に複数得点を重ねてきた破壊力は本物だった。同26分から6分間で城後の2得点目を含む3点を奪い、相手の息の根を止めた。今季先制した試合は22勝3分け無敗。昨季の10勝4分け4敗から大きく飛躍した。主力のMF鈴木、U-22(22歳以下)日本代表候補MF金森をけがで欠く中、底力を見せつけた。

 押せ押せムードの中、後半45分に磐田が1-1に追いつかれたとの情報がベンチに届き、ピッチで戦う選手にも伝えられた。だが、逃げきりを図り始めて30秒もたたないうちに、磐田が勝ち越し。“J1昇格”は一瞬で終わった。試合後、副将のMF末吉は「大分が同点に追いついたと聞いていた。大分にはもう少し頑張ってほしかった」と本音を漏らし、「切り替えてあと2試合を勝つことしか考えていない」と前を向いた。【菊川光一】