セルジオ越後氏(73)は72年に来日、戸惑うことはサッカーの環境ばかりではなかった。食生活では「熱いうどん、そばが食べられなかった。熱いものを食べることは日本で覚えた」と振り返る。いわゆる、汁ものの麺のことだ。ブラジルなど海外では、食べるときに音を立てる習慣がなく、むしろ音をたてるのはマナーが悪いと受け取られる傾向があった。つまり、日本での「ずるずる~っ」と音をたてて麺をすする習慣がない。

だが、すすって、空気が麺に絡むから、微妙に冷めて食べられるのだと気づいた。いわゆる立ち食いそば店でサラリーマンらが汁そばをかき込む姿を「外国人は『どうしてあんなに熱いものを早く食べられるんだろう?』と不思議に思っているよ」と話す。

また、「初めてワサビを食べた時はびっくりした」とも。「からいよ」と言われて「塩からい」の意味だと思い、舌にくると覚悟していたら「眉間にツーンときた」(苦笑い)。

外国育ちにとっての“難敵”である納豆については「頭で拒否したり、食わず嫌いはもったいない」と言うほど、日本に来て大好きになった。やはり、独特の粘りが「腐ったもの」をイメージづけ、海外では敬遠されていたようだ。「でも、納豆にはやはりワサビじゃなくてカラシだね」。カラシはブラジル時代から親しんでいたという。

◆セルジオ越後 ブラジル・サンパウロ生まれの日系2世。18歳でブラジルの名門コリンチャンスとプロ契約。同国代表候補にもなった。72年に来日、藤和不動産サッカー部(現湘南)でプレー。78年から「さわやかサッカー教室」で全国を回り、開催1000回以上、延べ60万人以上を指導。その経験から「セルジオ越後の子育つ論」など子育て本も出版。93年4月から日刊スポーツ評論家。06年文部科学省生涯スポーツ功労者表彰受賞、13年外務大臣表彰受賞。17年旭日双光章を受章。H.C.栃木日光アイスバックスのシニア・ディレクター、日本アンプティサッカー協会最高顧問。