関東3部リーグ所属の東京学芸大MF半田祥真(22)が、来年1月からJ3・FC岐阜へ加入すると発表された。静岡学園時代は控えで、一般入試で大学進学した苦労人がプロ切符をつかみ取った。同大OBで現監督の元日本代表DF岩政大樹氏(44)がこのほど取材に応じ、教え子にエールを送った。【取材・構成=佐藤成】

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自身も含めて多くのプロ選手を輩出してきた東京学芸大に5年ぶりJリーガーが誕生した。岩政監督と同様、一般入試を突破して入学し、4年間努力を重ねて夢をかなえた半田について、指揮官は「一番はやっぱり彼自身がそのチャンスをつかんだということがうれしいなと思いますね」と素直に喜んだ。

教員養成系の国立大学。プロ志望者ばかりではない環境。選手たちに「Jリーガーになることが偉いわけじゃない」と常々伝えている中で、「やはり久しぶりのJリーガーが出るということの部としての意味では、それぞれが成長するという延長の中に、選手としても成長する選手がいて、そこにJリーガーになれるという道が生まれた。選手たちがまた一段そのレベルを上げてくれるきっかけになるとは思うんで、部としてうれしいできごとになります」とうなずいた。

2年前に半年間コーチを務めた時のことを思い起こす。関東リーグへの復帰を目指して奮闘するチームに、コーチという形で後半戦だけ携わった。J2北海道コンサドーレ札幌で監督に就任するため、シーズン終わりで大学を離れる際、半田から「Jリーガーになりたいけど、どうしたらいいですか?」と助言を求められたという。

「唯一僕のところに聞きに来た。彼自身はいいものを持っているとは思いましたけど、客観的に見て、東京・神奈川1部から関東3部に上がって、関東3部の10番、サイドハーフでプレーしてて、うまいとは言っても注目はしないでしょうって話をした。彼の場合は相当走行距離が出せるし、走れて、テクニックがあるというのは誰が見てもわかるんですけど、そこにゴール数とかアシスト数が乗っかってくれば、必要とするクラブあるんじゃないかと話をした記憶がある」

選手として日本代表まで上りつめたキャリアの持ち主である岩政監督ならば、人脈も豊富。Jクラブに選手を紹介することは難しくない。ただ無責任なことをするつもりはない。それはクラブにも選手にも良い影響を与えないからだ。2年ぶりに監督として母校に戻った今季、岩政氏のアドバイスに向き合った半田は前期11試合で6得点をマーク。「基準値」に達していた。

「得点ランキングで彼より上にいる選手はストライカーばかり。特長を伸ばした上で、数字を残したのは大きかった。彼自身がゴールの形をこの2年でかなり増やして、右足でも左足でも、キックの質も、巻くシュートもあればストレートもあるし、ヘディングでも決められる。点取ることに特長があるのは、プロ向きでもあるし、プロから誘いがかかる重要なポイントだったと思います」

6得点の内容も評価に値するものが多かったという。「ゴールにはそれぞれいろんな価値があるけど、意味のあるゴールをたくさん取ったということ、チームを勝たせる存在になったということが大きい」。自身のプロ監督経験も踏まえ、指導者が究極的に求めるのは点が取れる選手だという。プロの世界は守備も堅く、GKのレベルも高い。「誰かがこじ開けてくれないと結局勝てなくなるんですよ。で、勝てなくなって困って、結局、点取れるやつからチームを作るんです」。その点でも半田を、自信をもって送り出せた。単なるオファーにとどまらず、特別指定選手までこぎ着けたのもうなずける。

自身は26年前に教員を目指して山口県立岩国高校から中等教育教員養成課程数学科に一般入学した。半田と同じように1年から出場機会を得て、選抜活動にも参加し、プロへの扉を開いた。その経験も踏まえながら、学芸大ならではの成長サイクルについて持論を展開した。

「学芸の場合は全国から選手を集められるわけではないので、早くから試合に出る環境がここにあるというのは大きな価値だと思いますね。僕は何も考えずにここに来たけど、そこにたまたまその環境があって、そこに僕は乗っからせていただいてサッカーの世界に入っていきましたけど、例えばトレーニングマッチで全然ダメで、私立だったら他の同じポジションの選手を使って終わりだと思うんですよね。でもうちはそこまで戦力がいないから、その失敗をどう改善するかを向き合わせるしかないんですよ。みんなそのチャンスを絶対また与えられる。それを自分の中でまた克服しながら4年間やっていくと相当伸びる。失敗してから成功体験までの期間が短い。4年間、特に一番伸びる時期にもったいない時間を過ごす子が多い中で、逆転できる学芸の4年があるよなというのは、今回の彼の成長によってまたみんな感じたと思う。そのおかげでまたみんな火がついてるんじゃないですか」

選手、指導者としてプロの世界に20年以上身を置いた岩政監督はその厳しさを、身をもって体感してきた。学芸大のように、何度もチャンスがない世界に飛び込むことの意味を理解している。「本当の戦いはここから始まる。引退するまで戦いが続いていくことの幸せを感じながら、チャレンジしていってくれればいいんじゃないですか」と優しく呼びかけた。