PGAツアーはフェデックスカッププレーオフシリーズで盛り上がっているが、米国シニアツアーであるPGAチャンピオンズツアーも盛り上がっている。6月に50歳を迎えたフィル・ミケルソンが24日に開幕する米シニアツアー「チャールズ・シュワブシリーズ at オザークナショナル」(ミズーリ州オザークナショナルゴルフクラブ)への参戦を決めたという。


■試合勘を保つためシニア出場を決断


新型コロナウイルスの感染拡大でイレギュラーなシーズンとなった今季のPGAツアーだが、ミケルソンはトップ3に3度入ったものの、1度も優勝はない。先週開かれたプレーオフシリーズ第1戦のザ・ノーザン・トラストは2日目で予選落ちしたため、次戦に進むことができず今シーズンの出場機会はすべて失われてしまった。

とはいっても、9月に入れば、PGAツアーは2020-2021年の新しいシーズンが始まり、17日からは全米オープンがニューヨーク州のウイングドフットGCで開幕する。ミケルソンは既にマスターズ、全米プロ、全英オープンを制しており、この大会で初優勝を果たせば、キャリアグランドスラムの達成となる。

今回はシニアツアー参戦といっても本格的なものではなく、悲願の全米オープン制覇に向けた調整の一環として参戦を決断したのだろう。

しかし、ミケルソンがシニアツアーでどのようなプレーをするのか、多くのファンが楽しみにしていることだろう。


■アマの参考になるシニアのプレー


ゴルフの試合をテレビ観戦することが好きな人も多いと思うが、シニアツアーに注目している人はそれほど多くはないかもしれない。最近、CS放送のゴルフ専門チャンネルで、米チャンピオンズツアー(シニアツアー)の解説をする機会が多いのだが、アマチュアにとってシニアの試合は参考になる点が多いと感じる。

PGAツアーの試合では、スター選手による異次元の飛距離や超美技の「ショー」を堪能することができる。しかし、そのショーをアマチュアが自身のゴルフの参考にすることは現実的ではない。それに比べて、知略と技術を駆使してコースを攻略するシニアツアーは、アマチュアのゴルフ上達の参考になる部分が多い。

シニアツアーのコースセッティングは、PGAツアーに比べて距離も短く、ラフやグリーンの難易度も落としてあり、アマチュアが普段回っているコースセッティングに近い。そのため、ターゲットの選定やクラブの番手選び、グリーン周りのクラブ選択などは非常に参考になる。

PGAツアー、チャンピオンズツアーの両方を解説していて気づいたのだが、PGAツアー選手に比べて、シニアツアー選手はグリーン周りでパターを使う頻度が高い。グリーン周りのラフが長く、傾斜にピンを切ってあるPGAツアーに比べ、グリーン周りのラフが短く、グリーンスピードもピンポジションも厳しくないシニアツアーではパターを使うことができる状況が多いのだ。

熟練したショートゲームの技を持っているシニアツアー選手でも、パターを使える状況では躊躇なくボールを転がしている。アマチュアはパターで打てる簡単な状況でもウェッジを持ちたくなるかもしれないが、シニア選手を見習ってミスの確率の低い選択をしてみるといいだろう。


チャンピオンズツアーは7月31日~8月2日に行われたザ・アレイチャレンジで再開し、PGAツアー17勝のジム・フューリックがシニアツアーデビュー戦で初勝利を挙げて話題を呼んだ。ちなみにこのとき優勝争いをしたのは、こちらもシニアツアールーキーのブレット・クイグリーだった。

クイグリーはPGAツアーでは未勝利で現役時代にほとんど活躍できなかった選手が、突如シニア入りしてから活躍し始めるところも興味深いところだ。ミケルソンやヒューリックのようなPGAツアーでもバリバリ活躍する選手がどのようなプレーをみせるのか気になるところだが、いぶし銀のシニアツアー選手たちに注目しても面白いだろう。

ぜひ、みなさんもミケルソンのデビュー戦、チャールズ・シュワブシリーズ at オザークナショナルに注目してほしい。

(ニッカンスポーツ・コム/吉田洋一郎の「日本人は知らない米PGAツアーティーチングの世界」)

◆吉田洋一郎(よしだ・ひろいちろう)北海道苫小牧市出身。2019年度ゴルフダイジェスト・レッスン・オブ・ザ・イヤー受賞。欧米のゴルフスイング理論に精通し、トーナメント解説、ゴルフ雑誌連載、書籍・コラム執筆などの活動を行う。欧米のゴルフ先進国にて、米PGAツアー選手を指導する100人以上のゴルフインストラクターから、心技体における最新理論を直接学び研究している。著書は合計12冊。書籍「驚異の反力打法」(ゴルフダイジェスト社)では地面反力の最新メソッドを紹介している。書籍の立ち読み機能をオフィシャルブログにて紹介中→ http://hiroichiro.com/blog/