新型コロナウイルスに感染した志村けんさんの他界は、誰もがショックやったと思います。藤浪晋太郎投手ら阪神3選手、ヴィッセル神戸DF酒井高徳も感染した。もう人ごとやない-。著名人の相次ぐ罹患(りかん)は世間に向けて、強烈なメッセージになったんやないでしょうか。

こんな危機的状況、正直言うて、1カ月前には想像してませんでした。

2月28日、女子開幕戦ダイキン・オーキッドレディースの中止が決まった。無観客開催から一転した決定に「できるやろ?」と首をひねった。周囲からも似たような声を何度も聞いた。

「ゴルフのトーナメントはできるでしょ?」

広いコースで同組にいるのは選手3人、キャディー3人の計6人。その前後に200~300ヤードの空間がある。同組の6人もフェアウエー、左右のラフと離れていたりする。もっとも大会はコースだけやない。クラブハウス、スタッフルーム、プレスルームなどの屋内活動もある。全国から選手らは集まってくるので、その間のリスクもある。

「それでも、できるでしょ? 何なら人数絞って」

同感です。しかし、そんな思いがここ数日で揺らぎだしたのも事実です。

折も折、日本プロゴルフ協会(PGA)の倉本昌弘会長が30日、シニアツアー開幕戦金秀シニア沖縄オープン(4月10、11日、沖縄・名護市)を実施方向で調整中と発表した。選手、関係者の生活を守り、ゴルフ界の低迷を避けたい思いからのアクションでしょうが、プロスポーツ競技団体の気概を感じました。

プロは世間に訴えて、なんぼです。見てもらい、感じてもらう。「すごい」「うまい」と楽しみ、喜び、時に「何しとんねん」と腹を立てる。「元気にする」「勇気を与える」てなたいそうなもんやなく、日常の話題、ちょっとした活気と。そんなささやかな“刺激剤”的な役割が、存在意義なんと違いますか。

今後「やはり厳しい」と、一転中止になるかもしれません。それでも「やらないという判断は簡単」と語った同会長の姿勢にこそ意味がある。すぐには無理でも状況が好転したら、少しでも早く、まず1歩を踏み出す-。PGAだけやなく、日本ゴルフツアー機構(JGTO)も、日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)も、その意気込みは忘れんとってほしいです。【加藤裕一】

12年9月30日、台風17号の影響で無観客となったコカ・コーラ東海クラシック最終日。バンカーショットを放つ石川遼
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