トム・ワトソンがトム・タナカに改名していた! といっても、レジェンドのゴルファーではない。名ゴルファーと同じ名前の経験豊富なキャディー、トム・ワトソン(44)さんだ。まさかの改名に驚いた。

先日、久々に国内男子ツアーの取材に行き、キャディーリストに目を通した。ワトソンさんの名前が見つからない。以前、取材した際は注目の若手プロ、久常涼(19=SBSホールディングス)のキャディーを務めていた。

何度もリストを見返した。引っ掛かったのが、久常の帯同キャディーとして登録されていた「トム・タナカ」だった。半信半疑ながら、担当者に「トム・タナカさんは、トム・ワトソンさんのことでしょうか」と聞いてみた。

やはり、トム・タナカさんの正体はあのトム・ワトソンさんだった。直接、本人に真相をたずねると「2月に結婚しました。奥さんの名字です」とうれしそうに明かしてくれた。キャディー仲間の紹介で知り合った30代の日本人女性と結婚したという。

オーストラリア出身のワトソンさんが、なぜ「タナカ」に改名したのか。「いい響きだしね。日本語で書くと『田中』って分かりやすいし、漢字も簡単だからね」と気に入っているようだ。戸籍を変えたわけではなく、現時点では、日本国内で田中を名乗っている。名刺には「田中翔睦」と漢字名が記されていた。

久常は「あの顔で『田中さん』じゃないですよね」と笑いながらも「トムさんはキャディーとして世界で戦ってきた経験豊富な人。心強いし、いつも力になってくれています」。呼び方はこれまでと同じ「トムさん」。全幅の信頼も変わっていなかった。

ある大会スタッフから「田中さん! おはようございます」と声を掛けられていた。日本語が堪能なトム・タナカさんも「●●さん、おはようございまーす」と普通に返していた。意外と「田中」が浸透していて、日常になっていた。

久常が言う通り、最初は「田中」のイメージが湧かなかったが、ギャップが意外と心地よく感じてしまった。「田中さん」と声を掛けるようになった。【近藤由美子】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)